×

関根貴大 ダービーは「新しいスタート。ここで全てが変わる」

[ 2017年8月7日 05:30 ]

ダービー直前特別インタビュー

笑顔でダービーへの決意を語る関根
Photo By スポニチ

 宿命の「さいたまダービー」を前に浦和の若きドリブラー、MF関根貴大(22)に独占インタビューした。才能を見いだしてくれたペトロヴィッチ前監督(59)の解任、ユース時代から指導を受ける堀孝史新監督(49)の就任。激動を経て挑む大宮戦への思い、ドリブルの極意など成長著しいアタッカーに熱く迫った。

 負けられない「さいたまダービー」は、くしくも堀新監督の初陣となった。ユース時代にも指導を受けた関根の胸中にはさまざまな思いが去来する。

 「ユース監督時代の堀監督はあまりしゃべらず怖いというイメージでした。プロのコーチという立場になってからはチームの雰囲気を良くしようとちゃかしてくれたり、兄貴分的な存在。それが監督になってまたピリッとしたと感じます。サッカーに関しては理論的。ミーティングでも映像で守備の良かったシーン、悪かったシーンを見せながら、ふんわりではなく明確に(指示を)示してくれます」

 早速、練習メニューもペトロヴィッチ前監督時代と変化した。ハーフコートで行われていた紅白戦は、5分の4、4分の3とピッチを広く使用する。

 「コンパクトなゲームの良さと広くなった時のメリットは違うものがあります。今、必要なのは広くフルコートに近い状況でどう守備をはめていくか。はまらない時、どうブロックを引いて守るか。また声を出し合うことも修正点の一つですが、そこがよく出る状況の練習ですね」

 埼玉県出身、アカデミーから浦和一筋。当然、ダービーへの思いは強い。現在暫定8位に低迷するが、そもそも歯車が狂い始めたのは4月30日、当時最下位だった大宮に0―1で敗れてからだ。

 「中学からレッズに入ってダービーの重みは感じています。選手はもちろん、サポーターも熱く戦ってくれる。その時のチーム状況は関係ない。(4月の大宮も)あれだけのサッカー、守備を堅く頑張れるのなら最下位にはいないだろうと。それがダービー。今回はウチの調子が悪いですけど勝てば希望が見える一戦になる。アカデミー育ちの自分が結果を出すことでさらに盛り上がる。新しい形で新しいスタートがダービー、ここで全てが変わると思います」

 今季の関根は全20戦に出場し3得点6アシストと成長著しい。中でもハイライトは7月1日の広島戦。3―3の後半ロスタイムに飛び出たマラドーナも驚きの6人抜き弾だ。

 「プロに入ってキャリアでも一番自分らしく最高のゴールでした。得点だけを見てもシチュエーションも時間帯もそう。全てであれを超えるプレーは、なかなかできないと思う。ロスタイムでしたし、負けてたわけでもない、どうしようか迷いながらパスを受けた時に相手が凄いプレッシャーで来て…。そこでスイッチが入り、もう行くしかないと」

 次の瞬間、関根はゾーンに入った。幼稚園、小、中学校とドリブル好きの指導者に恵まれた。幼少期から培われたドリブルの極意を実践していた。

 「サイドでの1対1は特にそうなんですけど相手の重心がズレるタイミングがあります。相手が右足に乗っているか、左足に乗っているか、あとは足元がそろった時、どちらにも行けない状況になる。そのタイミングで瞬時に判断します。調子がいい時は何も考えずサラサラーッと。6人抜きの時はみんながスローに感じました。特にゴール前では1人目が滑ってきたのも見えて、その後、2人抜いたのは細かいタッチでズラして…。相手も(シュートを)打つだろうっていうのが頭にあったと思うんですけど、少しの動きで引っかかるのはドリブラーとして快感でした」

 海外でも「浦和のメッシ」と報じられるなど強烈なインパクトを残した。ドリブラー関根の進化を証明する一撃となった。

 「プロになって“ワイド”というポジションを与えてもらい、自分にないものをたくさん吸収できた。攻撃的なスタイルは自分に合っているし、見えた課題、成長もたくさんあります。リーグ戦もまだ残っている。良い結果を出すことでペトロヴィッチ監督にも恩返しができると思います。“○○のメッシ”というのはまあ、たくさんいますから(笑い)」

 今や日本で最も注目すべき若手選手の一人となった。7月15日の親善試合ドルトムント戦でも存在感は抜群。ボルフスブルクのチーフスカウトでテレビ解説していたリトバルスキー氏も「関根は面白い」と評した。

 「ドルトムント戦は見ている人から“楽しそうだね”と言われました。まだドイツのシーズン前で相手も本調子でないのは分かっていますけど、肌で感じられたのは大きい。やれるかなというより、やってみたいなと思いました」

 関根が成長を遂げる上で欠かせないのが師と仰ぐ先輩の存在。昨年12月、オフを利用してヘルタMF原口元気(26)を訪ねた。

 「元気君の試合を見た後に会ったんですけど“早く来いよ”“浦和でやってたことがどんなものか、外から見るとよく分かるよ”と言われました。元気君もいるし日本人が多く成功していてイメージしやすいのでブンデスリーガはよく見ます。ドルトムント戦では“トルコのメッシ”(エムレ・モル)が衝撃でした。こんな選手がいるのか、と。それでもドルトムントが放出か、というのを(報道で)見て、どんなリーグなんだ?と。興味しかないですね」

 浦和の特徴といえば両ワイド。今季の関根は「右」でも「左」でも攻撃のアクセントを担っている。見える景色も、体の向きも異なる中、常に存在感を発揮できるのは関根の“凄み”でもある。

 「基本的には左の方がやりやすいです。全体が見えて(利き足の)右足でボールが持てる。シュートも狙いやすい。試合中、右をやっててポンと左へ行くのはいいですけど左から右へ行くと視野が狭く感じます。試合中に左から右とか、結構、地獄なんです。見てる人は簡単に思うかもしれませんが、ポンポン変わるのは難しいんだよ、ということは伝えたいです(笑い)」

 過密日程の今季、試合後は必ずその日のうちに映像で自身のプレーを反復する。少ないオフのリフレッシュといえば、もっぱら大好きなゴルフだ。

 「スコアは100はいかないくらい。最近はドライバーが飛ばなくて方向性重視、寄せて1パットですね。サッカーと違い、ゴルフでは攻めるのをやめました(笑い)。那須さんや森脇君と行くのですが、モリ君はなぜあんなにうまいのか?小技がモリ君のものとは信じられないくらい繊細なんです。サッカーも皆が思ってるよりうまいですし(特徴が)出てますね。僕はゴルフの良さが出ません。クロスはシャンクかトップばかりです(笑い)」

 今季の目標はズバリ10得点10アシスト。前半戦はチャンスメークに一定の手応えを感じた。後半は決定力にもこだわるつもりだ。

 「課題はやっぱりクロスの精度、あとはシュートのパンチ力とバリエーション、特にゴール前に顔を出すシチュエーションは増やしていきたいですね」

続きを表示

この記事のフォト

2017年8月7日のニュース