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名古屋サポに深々一礼した闘莉王 “支えてくれ”というエールだったのか…

[ 2017年7月29日 09:30 ]

田中マルクス闘莉王
Photo By スポニチ

 中国・三国時代の天才軍師とうたわれた周瑜は、こんな名言を残した。

 「何事も、その基は人です。人を得る国は盛んになり、人を失う国は亡びるでしょう」

 7月22日、J2の京都―名古屋戦で印象的なシーンがあった。2得点を決めて京都を勝利に導いたDF田中マルクス闘莉王(36)が試合後、名古屋サポーターの陣取るスタンドへ向かい、深々と頭を下げた。闘莉王にとって名古屋は、プロキャリア最長の7年間を過ごした地。昨季まで在籍した古巣への愛情が今も深いことを物語る光景だった。去来する思いは何だったのか。

 名古屋は夏の移籍市場で6選手が新天地に活躍を求めた。生え抜きは4人。その1人である元日本代表MFの選手は、移籍オファーが届いた時に強化部スタッフから来季構想外をにおわされたという。クラブ側は取材に「構想外とは言っていない」と説明したが、少なくとも本人にはそう伝わらなかった。そういった流れが一部で報道されたことを受け、サポーターを中心に厳しい声が上がった。その選手は引き留めなかったことを批判される形となった強化部スタッフから「勝手に出て行くんだろうが!」という言葉をぶつけられたという。

 5月下旬にはクラブOBで、現在は海外リーグで戦う日本代表選手が自主トレのためにクラブ施設の使用を要望した。返ってきた答えはNO。クラブ側は「彼の要望日は非公開練習日で対応ができなかった。だから断った」と説明したが、チームの練習と代表選手の自主トレ時間をずらすのは、そんなに難しいことだったのだろうか。また、クラブは現在、試合観戦用の通行証発行を選手の家族や仲介人(代理人)に限定し、OBには許可していないこともいささか極端な対応に映る。

 2010年のリーグ初優勝以降、ぬるま湯につかった時期はある。それを現強化部が是正しようとする姿勢は見える。それでも言い方ひとつ、接し方ひとつで受け取る側の印象はがらっと変わってくる。06年から10年までの強くなる過程を取材して言えるのは、名古屋は厳しくも温かいクラブだった。怒られることもあったが記者も含めてクラブは人と正面から向き合い、大事にしてきた。だから優秀な人材が集まった。育ってきた。

 それを闘莉王も感じている。だからこそ「国」の担い手の1人である古巣サポーターに「名古屋を支えてくれ」というエールを送ったのではないだろうか。(記者コラム・飯間 健)

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2017年7月29日のニュース