×

海外武者修行経て日本代表へ 2人の「こうへい」が示す新たな道

[ 2017年6月1日 09:30 ]

5月14日のFC東京戦の前半、先制ゴールを決める柏MF手塚
Photo By 共同

 親善試合シリア戦(7日、味スタ)、W杯アジア最終予選イラク戦(13日、テヘラン)に臨む日本代表に、ブルガリア1部ベロエ・スタラザゴラに所属するMF加藤恒平(27)がサプライズ選出され、話題を集めている。立命大在学中にアルゼンチンへ渡ったが、正式契約に至らず帰国。12年にJ2町田で1年プレーした後に欧州に挑戦した。モンテネグロ、ポーランドで武者修行を積み、昨年6月からブルガリアでプレーするボール奪取力の高いボランチ。シンデレラストーリーの行方が気になるところだが、個人的にはもう1人、注目している異色のボランチがいる。

 Jリーグで首位に立つ柏のMF手塚康平(21)だ。下部組織出身だが、15年にトップ昇格できず、まとまりかけていたJ2クラブとの交渉も契約直前で破談となった。急きょニュージーランド1部のセミプロクラブ・オネハンガに入団。リーグ戦終了後の昨年10月から練習生として柏の練習に参加して、今季から契約を勝ち取った。展開力に優れたレフティーはデビュー戦となった3月15日のルヴァン杯の清水戦で前半3分にゴールを記録。4月1日のリーグ広島戦から先発に定着すると、以降、チームは8勝1敗と白星を重ねて首位に躍り出た。

 海外ではレスターのFWバーディーの8部リーグからの成り上がりが記憶に新しい。イングランドは4部までがプロリーグで、5部以下は主にセミプロとされる。一方、日本では純粋なプロリーグはJ1とJ2のみ。J3のクラブは「プロ契約選手の保有人数が3人以上」の規定で、プロとアマが混在しているのが現状だ。J3やJFLからJ1にステップアップする選手はまれにいるが、日本の8部相当は都道府県2部リーグ。記者は10年ほど前に東京都2部の「駿台クラブ」に所属した経験があるが、メタボの選手もおり、人数が11人そろわず公式戦に臨むこともあった。バーディーのように、そこからジャンプアップした選手はさすがに記憶にない。

 Jリーグは発足から25年目のシーズンを迎えたが、歴史ある欧州のリーグと比べるとまだまだ裾野は狭く選手層も薄い。国内にとどまっていれば下部リーグからの飛躍は難しいだけに、海外で成長を遂げた加藤や手塚は新たなモデルケースとなる。くしくも、2人の名前は同じ“こうへい”。色眼鏡を通した話題先行の露出だけではなく、ピッチ内の実力を正確に伝える“公平”な報道も心掛けたい。(記者コラム・木本 新也)

続きを表示

この記事のフォト

2017年6月1日のニュース