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日本の新エース久保、フィーバーに振り回されないワケ…18歳で「大人の怖さ知った」

[ 2017年4月1日 10:00 ]

W杯アジア最終予選UAE戦の前半、ゴールを決め喜ぶ久保
Photo By スポニチ

 「満足したら、そこで終わりですからね。そこはわきまえていますよ」

 この言葉が何よりも嬉しかった。日本代表FW久保裕也(23=ヘント)だ。

 先日のW杯ロシア大会アジア最終予選。久保はUAE戦、タイ戦でともにスタメン出場し、2得点3アシストを記録した。チームも2連勝。タイ戦翌日の29日、関東のスポーツ紙は一紙を除いて1面に「久保」「新エース」の見出しが躍った。一躍、時の人となった。

 そこでタイ戦が終わった後、久保に「見える景色が変わったか?」と聞いた。返ってきた答えが、冒頭の言葉だった。

 周囲の過熱に振り回されない。こういう答えが返ってくるだろう―。実はそんな確信があった。

 忘れもしない12年。2月に高校3年生で当時のザックジャパンに選出された(出場はなし)。2種登録されてJ2京都のトップチームで出場した11年。久保はリーグ30試合10得点を挙げ、天皇杯では準決勝と決勝の2試合で得点を奪った。センセーショナルで出来事にメディアは群がった。数多くのエージェントが近寄ってきた。メーカー関係者もこぞって東城陽市内のグラウンドに足を運んだ。

 だがトップ昇格1年目、実質プロ2年目の12年シーズン。久保は苦しんだ。シュートが入らない、ゴールが奪えない。リーグ開幕・湘南戦こそスタメン出場したが次第にベンチを温めることになり、スタンドから試合を観戦することもあった。時が経つに連れてメディア、代理人、メーカー関係者は潮が引くようにいなくなった。「あの時は大人の世界の怖さを知った」と笑うが、18歳の少年は“フィーバー”なんかはバブルのようなものだと理解した。すぐに弾ける。だから現在、新時代の寵児として大々的に取り上げられても浮かれない。

 「ピッチ外では謙虚に、ピッチ内では堂々と」を心に刻む。どれだけゴールを奪っても、どれだけ称賛を受けても、今後も久保はスタンスを変えないだろう。4月2日(日本時間3日未明)からは優勝決定プレーオフが始まる。淡々と、かつ鋭利な刃物のような目で自分の仕事に集中する久保の姿が、早くも目に浮かぶ。(飯間 健)

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2017年4月1日のニュース