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28歳女性指揮官初ACL!香港イースタンSC率い、いざ女の戦い

[ 2017年2月21日 05:30 ]

香港イースタンSCを率いるチャン・ユェンティン監督(AP)
Photo By AP

 アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)東地区が21日に開幕する。鹿島、浦和、川崎F、G大阪が日本勢9季ぶりの優勝を目指す大会で、既に大きな注目を浴びているのが、川崎Fと同じ1次リーグG組のイースタンSC(香港)を率いるチャン・ユェンティン監督(28)だ。女性指揮官がACLで指揮を執るのは史上初めてとなる。22日の初戦で、13、15年に続くアジア制覇を狙う強豪の広州恒大(中国)とアウェーで対戦する。

 歴史的初陣だ。香港のチームとして初めてACLに出場するイースタンSCを率いるのが、大会史上初の女性監督となるチャン・ユェンティン氏。28歳の若き指揮官は「アジア最大クラブの広州恒大、さらに水原、川崎Fと一緒で厳しい組。我々のレベルが違うのは理解しているが、サッカーに不可能はない」とアジア連盟公式サイトで意気込みを語った。

 既に男子サッカー界に歴史を刻んだ。15年12月に前監督辞任にともない、当時27歳でコーチから昇格。その後15戦でわずか1敗という快進撃でチームを21季ぶりの香港リーグ優勝に導き、ACL出場権を獲得した。「男子サッカーの1部リーグで優勝を果たした初の女性監督」として昨年6月にはギネス世界記録に認定された。

 サッカーを始めるきっかけは「13歳の時にテレビでベッカムを見て、格好良さに心を奪われた」とミーハー。家族に大反対されたが、スクールの応募書に親の名前を自分で書いて入校した。女子のアマクラブ、香港代表などでプレーしながら地元名門の香港中文大を卒業。10年から男子の香港1部ペガサスでデータ分析や下部組織コーチとしてキャリアを積みながら、大学院でスポーツ科学と健康管理学の博士号を取得し、A級ライセンスも取得した努力家だ。

 「香港では仕事に女性差別はない。サッカーで女性でも同じことができる」と話題ではなく実力が認められての監督就任だったが「あと3〜5年はコーチをすると思っていたし、最初は不安だった」という。それでも「自分の特長はコミュニケーション。いつも選手の話を聞いて学んでいる」と年上もいる男子選手の信頼を勝ち取り、チームをまとめた。データ分析、映像での戦術説明など下積み時代に磨いた手腕も発揮。昨季退団したオーストラリア人FWバリシッチは「監督に性別は関係ない。最初は驚いたが選手は男性監督と同じように接した」という。

 就任1年少々の“シンデレラ指揮官”が、初戦で激突するのが広州恒大フェリペ監督。キャリア35年を誇るブラジルの名将について「02年W杯でブラジルを優勝に導くのを見ていた。対戦は本当に楽しみ」と敬意を表しながらも「重圧は相手の方にある。勝った上に大量得点もしたいわけだから」と駆け引きを忘れない。クラブ年間予算は3億円前後で昨年のスポンサー撤退によるACL出場辞退騒動を乗り越えての出場。年間予算500億円超といわれる広州恒大を相手に奇跡を起こせるか、その手腕に注目だ。

◆チャン・ユェンティン 1988年10月7日、香港生まれの28歳。現役時代はDF、FW。大学卒業後、男子香港1部のペガサス、南区で下部組織コーチなどを務め、15年夏にイースタンSCのコーチに就任。同年12月に監督に昇格し、チームを21季ぶり優勝に導く。昨年12月にアジア連盟年間表彰式で女子最優秀監督賞を受賞。牛のように辛抱強い性格と、広東語で婉の発音が丸に近いことから、ニックネームは「牛丸」。

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2017年2月21日のニュース