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村井チェアマン 「育てて勝つ」具現化向けた指導者海外研修

[ 2016年11月15日 12:00 ]

 若手選手の育成についてはJリーグの最も重要な課題の一つで、ここ数年いくつかの打ち手を実践している。13年には23歳以下の選手の期限付き移籍促進を目的に「育成型期限付き移籍」を導入。14、15年には新設されたJ3リーグにU―23選抜チームを参戦させ、16年からは単独のクラブ(3クラブ)がセカンドチームを持ちJ3で戦う等、若手選手の出場機会の増加に力を入れてきた。今後はルヴァンカップで若手選手の出場を義務付けるなど、さらなる出場機会の確保に努めたい。

 昨年からは、日本サッカー協会とJリーグが協働で選手育成事業(JJP)を開始したが、手始めにベルギーの育成評価システムである「フットパス」を用いてブンデスリーガなどと同じ基準でJ1、J2全クラブの育成力について客観的な評価を受けている最中だ。

 そして、このたびJJPの活動として横浜ジュニアユース監督である坪倉進弥さんを1年間ベルギーの名門クラブ・アンデルレヒトに派遣することを決め、先週JFAハウスで記者会見を行った。

 これまで、数多くの選手が海外に渡り、また指導者についても海外のクラブで短期間の研修を行うことはあったが、現役のクラブの育成指導者が1年という長きにわたり海外の育成現場で研修を行うことはあまり例を見ない。

 今回の研修実現には、JJPを立ち上げた我々の意図や選手育成の意義を理解し、坪倉さんを送りだす横浜の積極的な姿勢や、何よりも家族と離れて1年修業の場に身を置く坪倉さんの、育成現場の指導者としてさらに向上したいという強い意志があった。

 彼が派遣されるアンデルレヒトは05年から育成改革を進め、改革当時8%足らずだったトップチームの育成出身者比率を14年には5割近くまでに増加させ、加えて14~15年シーズンのヨーロッパチャンピオンズリーグ出場クラブのうち、平均年齢がアヤックスに次いで2番目に低い。まさにJリーグの理想である「育てて勝つ」を具現化したクラブなのだ。クラブ会長はここ40年で2人、チームCEOは30年で2人、アカデミーダイレクターも20年で2人しか就任しておらず、経営陣の安定性と長期的ビジョンを基盤に育成を中心としたチーム強化を行っていることが、今回このクラブを派遣先に選んだ一番の理由である。

 坪倉さんは、アカデミーコーチとして、現地で生活して日常の中で指導経験を積むことになるが、これまでの指導者研修でありがちなピッチの外からの学びの場ではなくチームスタッフの一員となってミーティング参加や遠征にも同行し指導も行うことで、より具体的な指導メソッドを体得することが可能となる。

 今回の派遣において彼に課せられた使命は、日本のサッカー背景を理解した育成現場の指導者として、国際基準を把握し日本へ還元すること。つまり、アカデミー指導者の日本代表としての使命を担っているのだ。20年東京五輪を見据え、Jリーグや日本サッカーの育成の強化は急務である。とはいえ、それは一朝一夕でかなうものではない。まずは「育てる人間を育てる」ことから注力していきたい。その先駆けとして欧州に挑む坪倉さんにチェアマンとして大きな期待と希望を抱いている。(Jリーグチェアマン)

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2016年11月15日のニュース