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神戸 18年にも導入検討のハイブリッド芝は新たな選択肢になるか

[ 2016年10月29日 09:50 ]

練習場のゴール裏にテスト施工されたSIS社のハイブリッド芝
Photo By スポニチ

 注目度の高さをうかがわせる光景だった。27日、神戸市西区にあるヴィッセル神戸の練習場。新たに導入するハイブリッド芝の説明会とテスト施工に、全国各地から芝生業界の関係者が40人以上も駆けつけた。天然芝グラウンドのゴール裏に敷かれたのは、英国に拠点を置くSIS社の「SIS Grass(人工繊維)」。世界で4台しかないという施工機械によるスティッチング施工の工程を、関係者はつぶさに観察し、植え付けられた芝を近距離からカメラで撮影した。

 日本の芝事情を大きく変える存在になり得るからこそ、多くの人が集まった。このハイブリッド芝は、補強材として人工芝を植え、そこに天然芝の根が絡むことで強度が増すという仕組み。従来の人工芝とはまったく別物で、まだJリーグでは導入が認可されていないものの、世界的には幅広く採用されており、すでにW杯や五輪の会場でも使用された。18年W杯ロシア大会の決勝会場であるモスクワ・ルジニキ・オリンピックスタジアムでも「SIS Grass」のハイブリッド芝が使われる。

 神戸が本拠地とするノエビアスタジアムは、芝の根つきが悪いことから、昨季は急きょ試合会場を変更するなどピッチ状態に問題を抱えてきた。「クオリティーの高い試合をして、ファンの皆さんに喜んでもらうためにはどうしたらいいか」と考えてきた三木谷研一副会長。ハイブリッド芝の導入を検討し、昨年9月に英国サッカー協会のナショナルトレーニングセンター「セント・ジョージズ・パーク」を視察。そこで、英国サッカー協会所属の主席グランズマンであるアラン・ファーガソン氏から、数あるハイブリッド芝の中から「SIS Grass」を推奨された。

 「SIS Grass」のハイブリッド芝は何が優れているのか。補強剤として植えられる人工芝は全体の5%以下と低く、通常の天然芝でプレーする感触を維持。そこに人工芝の持つ耐久性が加わることで使用後の回復は早まり、連戦などにも対応できる。良い環境を常に維持することが可能になれば、選手のプレーの質は向上し、かつケガのリスクも軽減される。クラブレベルでも広まっている欧州では、スタジアムや練習場などをハイブリッド芝に張り替えるクラブが多く見られ、最近ではトルコの名門ベシクタシュが本拠地ボーダフォン・アリーナに「SIS Grass」を導入した。

 神戸は練習場のゴール裏に敷いたハイブリッド芝を使いながら、状態や成長具合などを継続的に調査していく予定。早ければ18年シーズン開幕からノエスタへの本格導入をクラブは検討しており、テスト施工されたピッチを参考にしていく方針だ。Jリーグの認可が下りるかどうか、高温多湿の日本の気候に合うか、行政と連動できるかどうか、そしてコスト面…。クリアにしなければならない問題はあるものの、日本サッカー界の芝生にも新たな選択肢が生まれることを望む。(西海 康平)

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