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村井チェアマン 判定に「説得力」与えた審判6人制を評価

[ 2016年10月18日 12:00 ]

<ルヴァン杯決勝>優勝し喜ぶ浦和サポーター
Photo By スポニチ

 15日、まさに秋晴れの埼玉スタジアムで行われたJリーグYBCルヴァンカップ決勝は5万人を超えるファン・サポーターの中、延長PK戦の末、浦和レッズが13年ぶりのカップウイナーとなった。

 ご存じの通り、今年ヤマザキビスケット株式会社は社運を懸けてブランド変更というチャレンジを行った。Jリーグとしても大会途中であったのだが主力商品の新名称を冠した「ルヴァンカップ」と名称変更してその思いに応えたいと考えた。実はこの決勝では、ヤマザキビスケット社の比ではないが、Jリーグとしても新たなチャレンジを数多く試みた。私はこの試合を「Jリーグが挑戦する場」と位置付けていた。

 何よりも大会名の変更をはじめとしてキヤノン株式会社との共同による自由視点映像の制作、ぴあ株式会社との共同による、顔パス入場システムといった各種実証実験の実施などさまざまな挑戦を試みたのだが中でもアディショナル・アシスタント・レフェリー(AAR)は今後の審判のあり方を問う重要な施策だった。

 スタジアムにいらした皆さんには多少奇妙に映ったかもしれないが、ルヴァンカップの準決勝からAARを導入し、この日の決勝にも両ゴールラインに1人ずつ配置されていた。スタジアムを埋める大観衆、しかもカップ戦の決勝、緊張の場面で増員された審判がどう影響したのか、試合終了直後の審判控室で当事者の皆さんに直接その感想を聞いてみた。

 主審の視点から見ると、ポジショニングで思い切って攻撃側の左サイド深くに入っていけたことが大きかったのだという。AARがいないと、次のプレーの際に右サイドにボールがいくことを考えると距離ができてしまうので、サイド側に深く入ることを躊躇(ちゅうちょ)することがあるが、AARがいるので思い切れたのだろう。また、ゴールライン上にAARが立つことで判定に対する安心感や悪質なファウル等への抑止力となるなどの意見に加えて、とりわけ私が注目したのは選手たちが判定を受け入れる姿勢が違ったのではないかとの見解があったことだ。ゴール前に審判が1人増えていることで選手にとっては「抑止力」だけではなく、下した判定にもより「説得力」を感じるのだろう。

 もちろんAARにも課題は残る。試験運用も含めたこれまでのAAR導入試合においては判定の難しい場面はそう多くはなかったが、ゴールに関わる判定を受け持つだけに主審とAARと判断レベルの共有化は不可欠である。また、本格導入が進むことになれば質の高いレフェリーが数多く必要になるため、育成の観点も重要になってくる。

 とはいえAARがジャッジの正確性や安定感を高めていることは紛れもない事実であり今後も日本サッカー協会審判委員会と連携を取りながら、本格導入に向けて環境整備に取り組んでいきたい。

 今後に向けて収穫の多かったルヴァンカップだった。(Jリーグチェアマン)

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2016年10月18日のニュース