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監督交代で息を吹き返した名古屋 指揮官に求められる数多くの資質

[ 2016年9月28日 10:35 ]

解任された新潟の吉田達磨監督
Photo By スポニチ

 「1試合でも指揮を執ればやめられない」

 監督という職業はそれほど刺激的な職業だと聞いたことがある。選手の個性と能力を見抜き、組織との融合を図る。試合までの時間は選手のコンディションを見定め、同時に対戦相手の分析を進めて先発メンバーを選出する。実際の試合では目まぐるしく動く90分間の中で流れを読んで采配を振るう。試合終了後には訪れる歓喜、もしくは悔しさ…。私のような記者でも、監督という職業がどれほど濃密な時間を過ごしているかは分かる。

 だからこそ誰でも就ける職業ではない。繊細な洞察力と入念な準備、勝負師としての勘、理想と現実の折り合いをつける判断力。またチームを一つにする人間力(カリスマ性やモチベーター)と精神力の強さも必要だ。持ち合わせるべき資質は多く、やるべき仕事も多い。サッカーに限らず、どんなスポーツでも監督というのは最重要なポジションだと思っている。

 J1は残り4試合。27日には15位・新潟が吉田達磨監督(42)の解任を決定した。8月23日には降格圏16位に低迷する名古屋が小倉隆史監督(43)からボスコ・ジュロブスキー監督(54)へとバトンタッチした。新潟の事情は分からないが、名古屋は選手の特徴と小倉前監督の目指した5人目まで連動するサッカーは融合しなかった。理想を追求するあまり、疲労がたまる夏場でも連日の紅白戦を行って、選手の体調を整えられないこともあった。

 ジュロブスキー監督に交代後2勝1分け1敗。新監督を慕って復帰を決意した闘莉王の存在も大きいが、前任者にはなかった守備での決まり事が徹底された。持ち前のサイド攻撃も威力を取り戻しつつある。若干のメンバー変更も施した。派手さはないが堅実。リーグ戦で18試合勝てなかったチームは息を吹き返し、残留圏まで勝ち点1差に迫った。小倉前監督に資質がなかったとは言わない。だが現在の名古屋においてはジュロブスキー監督の方が選手の能力と個性を生かし、勝利に近いサッカーだった。

 初秋。各チーム、来シーズンの編成へ動き出しつつある。監督交代に踏み切るクラブもあるだろう。J3まで合わせると全56クラブ。言うまでもなく、指揮官を選ぶ側の資質も問われている。

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2016年9月28日のニュース