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村井チェアマン「廃校を練習拠点に」J2水戸の地域共生が面白い

[ 2016年9月20日 10:40 ]

 水戸ホーリーホックというチームは2000年にJリーグに加盟して以降、J2リーグの中、下位を行き来する比較的地味なチームだ。メインスタジアムのケーズデンキスタジアム水戸は09年に改修されたものの、依然としてJ1基準である1万5000人の収容人数を満たしていないため、現状ではクラブが優勝してもJ1に昇格することはできない。練習場も河川敷の散水設備のない凸凹のグラウンドを使用し、また、過去には洪水被害を何度も受けている。何よりも茨城県にはJリーグ有数の人気クラブである鹿島アントラーズが存在するなどホーリーホックが経営上の言い訳をしようと思えば事欠かない。

 しかし、そのホーリーホックは、スタッフの懸命の努力ときめ細かい入場施策を用いることで平均入場者数がここ数年着実に上昇し続けている。さらに今シーズンは「ベトナムのメッシ」との異名を持つグエン・コンフォン選手を獲得。ベトナムから直行のチャーター便が茨城空港に就航することになり、ベトナム航空がユニホームスポンサーにまでなった。国際化が進むJリーグ内でもにわかに注目の存在になりつつある。

 そんなホーリーホックにさらに朗報が舞い込んだ。水戸市内から車で40分ほどの城里町から、昨年3月に廃校となった中学校を練習拠点に使用する提案を受けたのだ。校舎は廃校といっても改築後20年にも満たないもので、校舎面積はケーズデンキスタジアム水戸以上の大きさ。体育館もあればプールもあり、クラブハウスはJ1ライセンス基準を満たし、校庭を改装する専用練習場では、天然芝2面が確保できる。18年4月からの使用を目指して先日クラブと城里町による協定書の締結も行われた。

 この取り組みは決してクラブだけがメリットを得られるものではない。城里町側としても、廃校の利活用としてクラブハウスと併設してこの地区に点在していた支所や公民館を置くことでコストが削減できるとともに地域の集いの場や防災拠点としての機能が期待されるのだという。こうしたことが実現できたのも、地域密着や地域との共生を何よりも重視してきたクラブの姿勢が評価されたものであり、Jリーグの理念の具現化や地域創生のベンチマークとして注目されるはずだ。

 ホーリーホックはクラブハウス建設を機に、アジアとの交流に加えて、アカデミー世代を中心とした人材育成、さらには茨城の強みである農業技術支援のサポートまでクラブの成長戦略に掲げてプロスポーツクラブを核とした豊かな街づくりを展開していくのだという。まだまだ構想段階のものは多いものの、今後のホーリーホックの動向から目が離せない。(Jリーグチェアマン)

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2016年9月20日のニュース