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村井チェアマン直言 熊本のホーム試合再開へ全力尽くす

[ 2016年5月17日 12:00 ]

Jリーグ・村井満チェアマン

 5月15日、J2ロアッソ熊本は熊本地震以来初めてのゲームに臨んだ。試合会場である対戦相手・ジェフ千葉のホームスタジアムであるフクアリは、これまで私が見たスタジアムの光景とは大きく異なるものであった。

 千葉サポーターは、「熊本、熊本」と被災クラブへのねぎらいのエールを送り、それに呼応して熊本サポーターは、千葉サポーターに「サンキュー、千葉」と感謝の言葉で返した。時には選手を鼓舞。強い言葉で相手に向かうサポーターの姿だけではなかった。

 試合は、序盤から激しい攻防が繰り広げられた。コンディションに勝る千葉に対して、熊本は一歩も引くことなく前線から激しくボールを追い続けた。後半になると、練習不足が影響したのであろうか、足をけいれんさせる選手が続出したのだが、それでも彼らはすぐさま立ち上がり走り続けた。前へ前へとボールを追い掛けるその姿は、被災地熊本の人々に勇気を与えたと思うし、そのひたむきな姿にこちらも胸が熱くなった。

 結果は2―0で千葉が勝利した。千葉の得点時、千葉サポーターからの歓声と熊本サポーターが選手を鼓舞するコールには、ひたすらに愛するクラブを思う気持ちだけが込められていた。90分間だけはいつもの光景がそこにはあった。試合終了後、熊本の選手たちが自らのサポーターへあいさつに向かったが、背後には千葉の選手たちがいた。彼らもまた苦難の状況を乗り越えスタジアムに集まった熊本サポーターに感謝と激励の思いを示したかったのだろう。

 5月15日はJリーグの日である。23年前のこの日、Jリーグは開幕した。開幕当初10だったクラブ数は、今年その輪を53まで増やした。そして24回目のこの日、私はJリーグに関わる全ての方々がつくり上げた「絆」の強さをこれほどまでに強く感じたことはなかった。

 全国の試合会場や街頭で集まった募金総額は1億円を超えた。タイトルパートナーである明治安田生命からはこの日の試合に1000人近くの社員が自発的にスタジアムに集まった。この日は熊本の人気キャラクターである「くまモン」がJ全53クラブのユニホームを着用したデザインをプリントしたタオルマフラーの販売予約を開始したのだが、1日で1万個近くの注文を受けたという。

 この日だけでも熊本に対するさまざまな思いに出合ったのだが、忘れてはならないのはホームタウンである熊本のことだ。熊本県や熊本市は、ホームスタジアムでの早期再開に向けて全力で取り組んでいる。数多くの方々が避難生活を余儀なくされている中、いつ、どのような形での再開が望ましいか、そこには大変な苦労が垣間見える。

 被災地支援に力をくれた全国のサポーターへの感謝の思い、そしていまだ困難と闘い続けている熊本の方々の復興への思い、さまざまな思いをロアッソ熊本とともに受け止めながら、ホームスタジアムで再開の日を迎えるまで、Jリーグとしてできることを全うしていきたい。(Jリーグチェアマン)

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2016年5月17日のニュース