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日本サッカーに“球際の文化”が育たないワケ

[ 2016年5月13日 11:30 ]

ハリルホジッチ監督

 サッカー王国ブラジルにはサッカーに関する様々なスラングがある。例えばBaile(バイレ)。本来の意味はダンスパーティーだが、相手が弱く好き勝手にプレーできる試合を指す。例えばBalao(バラオ)。直訳は気球だが、大きく枠の上に外れるシュートを意味する。

 球際のプレー関する言葉にもユニークな表現が多い。肉店主を意味するAcougueiro(アソウゲイロ)はラフプレーを頻発する選手、馬を意味するCavalo(カヴァーロ)は荒々しい選手、ポップコーン店主を意味するPipoqueiro(ピポケイロ)はケガを恐れて接触プレーを避ける選手を指す。これら対人プレーにフォーカスしたスラングは、技術の高い選手が揃うブラジルでも球際の激しさを重視していることを象徴している。

 日本ではA代表のハリルホジッチ監督が、決闘の意味を持つDuel(デュエル)というキーワードを使い、球際の戦いの重要性を強調。来日当初のJリーグ視察では激しさのない淡泊なサッカーを嘆いていたという。確かに日本では少年時代から技術重視の綺麗なプレーを教え込まれる傾向が強い。「サッカー=格闘技」という意識は薄く、南米では日常茶飯事である故意に相手を削ることなどは「悪」とされる。

 記者も中学、高校時代の部活動で1対1の守備では、むやみにボールを奪いにいくのではなく、交わされないために相手との距離を寄せて止まるように指示を受けた記憶がある。この「寄せる」というソフトな表現も日本に“球際の文化”が育たない理由の1つのように感じる。プレスを掛けることを「奪う」「潰す」「削る」「刈る」など過激にすれば、戦う意識が根付くかもしれない。

 Duelに変わる球際の激しさを強調する日本語のフレーズがあれば、とも思う。ブラジルに様々なサッカー関連のスラングがあるように、スポーツ文化を育む上で言葉の果たす役割は大きい。自戒の念を込めて、このコラムを執筆している。(記者コラム・木本 新也)

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2016年5月13日のニュース