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【オシムのW杯総括2】商業化の犠牲になったブラジル 試合の質低下も

[ 2014年7月15日 09:35 ]

3位決定戦でオランダに敗れ、沈んだ表情のダビド・ルイス、オスカルらブラジルの選手たち(AP)

 前回の優勝国スペインが1次リーグで敗退したことで、「ティキタカ」と呼ばれてきたスペイン式の終焉(しゅうえん)がささやかれている。レアル・マドリードとバルセロナの2大クラブの選手を中心に代表を構成しているが、メッシやネイマール、C・ロナウド、ベンゼマら外国人選手に依存している。そうした構造的な問題も含め、教訓を引き出してほしいものだ。

 しかし、これでスペイン式が古くなり世界の主流が守備的になるのかというと、そう簡単なものではない。たしかに今回は、守備的なチームや退屈な試合が目についた。オランダなども、数年前にバルセロナに対抗するためにモウリーニョが考案した戦術を参考にしたのだろう。しかし、先に相手にボールを渡してミスを待つ消極的な方法では、力の劣る相手に勝てないし、サッカーの進歩も楽しみもない。

 一方、優勝したドイツは、4年前の準決勝で敗れ、「スペインに勝てるチームづくり」を目標にしてきた。ドイツの回答は守備的戦術への回帰ではなく、スペイン式をよりダイナミックに発展させることだった。ショートカウンターなどの戦術にも幅を広げた。

 ドイツ以外にも、メキシコ、チリやコスタリカ、アルジェリアなどがいいチームをつくっていた。強い相手にも勇気をふるってディフェンスラインを高く保ち、危険なアタックをくり返したが、共通しているのは「走る」ことだ。

 W杯全体としては満足するわけにはいかない。ゴール数は多かったが、オランダ―スペイン(5―1)、ドイツ―ブラジル(7―1)など大味な試合もあった。見て面白いといわれる「3―2」など両チームが2点以上取ったスリリングな試合は少ない。

 南半球は「冬」なのに、赤道地帯で高温多湿だったことも、試合の質を下げた。しかも、欧州のテレビ放送に合わせた開始時間も、選手の疲労度を強めた。放送権収入も大事だが、試合がつまらなくては仕方がない。選手のコンディションに配慮すべきだった。

 商業化が進み、W杯の人気が高まると、選手たちへのプレッシャーも大きくなり、それが精神的重圧になる。ブラジルの息切れは、サッカービジネスの犠牲になったと言うこともできる。4年後のロシア、その次のカタールはどんな姿になっているだろうか。

 W杯優勝経験国のスペインやイタリア、イングランドの敗退も、商業化に関係している。5月に各国リーグが終わり、疲労回復しないままにW杯が始まる。欧州チャンピオンズリーグなどの過密日程を含め、W杯そのものだけでなく、サッカー界の全体的な改善が必要な時期に来ていると思う。

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2014年7月15日のニュース