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王国ブラジルに何が…リーダー不在、主力におんぶに抱っこの選手層

[ 2014年7月9日 15:40 ]

ドイツに1-7で大敗し、ピッチに座り込むグスタボ(左)とダビド・ルイス(AP)

W杯準決勝 ドイツ7―1ブラジル

(7月8日 ベロオリゾンテ)
 世界中の誰もが想像していなかったであろう、ホスト国ブラジルの準決勝での7失点大敗。地元開催での優勝が至上命題だったサッカー王国ブラジルに、一体何が起きていたのか。スポニチ本紙評論家の川本治氏(62)に聞いた。

 まず第一に挙げたのが、リーダーの不在だ。ブラジルはエースのFWネイマール(22=バルセロナ)が準々決勝のコロンビア戦で脊椎骨折の重傷を負って離脱。さらに累積警告による出場停止で主将のDFチアゴ・シウバ(29=パリSG)を欠いていた。

 「攻撃の要であるネイマールがいないことはもちろん、このチームにとっては守備の要であるチアゴ・シウバの存在が大きかったのだろう。1点目を取られてから守備を修正する暇もなく、次々と失点を重ねた。こういう時はベンチから何を言ってもダメ。ピッチにリーダーがいなかったことが響いた」と守備面および精神的支柱としてのチアゴ・シウバの不在が痛かったと指摘。さらに「当初ブラジルは最低でも決勝進出という予定でいただろうが、エースが怪我をして、主将が出場停止…。さあ、代わりは誰だという時に、ブラジルって結構選手がいないよねという印象だった。あまりに彼らに“おんぶに抱っこ”だった」と王国の選手層の薄さを嘆いた。

 「ブラジル人というのは熱しやすく、冷めやすい面がある。警戒していたセットプレーであっさり先制点を失い、ショックから立て直せないままFWクローゼ(36=ラツィオ)に新記録となるゴールを決められて完全に戦意を喪失した。“もう点は取れない”という気持ちにチーム全体が支配されてしまった」。

 そして、前半だけで5失点。取り返すにはあまりに大きな点差がついた。そして、ドイツ戦を欠場したネイマールの代わりに出場したFWベルナルジ(21=シャフタル・ドネツク)は「プレッシャーから何もできなかった」と川本氏。本来ならネイマールが入るポジションに入った、日本でもお馴染みのFWフッキ(27=ゼニト)についても「何度も自分から仕掛けたが、ほとんど破れなかった」と期待外れに終わったとし、「他の選手も“行こうとしては取られる”その繰り返しだった」と“主役”を失ったブラジルのもろさを指摘。「ネイマールがいなければ、準決勝ではなくもっと早い段階で消えてしまっていたかもしれない」と断じた。

 そして、「W杯予選がないのも善し悪しだ。他の国がW杯予選という真剣勝負を戦っている中、開催国ブラジルはフレンドリーマッチ(親善試合)しかできなかった。弱小国にとっては予選免除の自国開催は有り難いだろうが、果たして強豪国にとってはどうなのか」と今回のブラジル代表が直面したチームづくりの難しさも挙げた。

 ◇川本 治(かわもと・おさむ)1952年(昭27)5月1日、北海道釧路市生まれの62歳。室蘭清水ヶ丘高校2年までGKを務め、中央大進学後以降はFWに転向。古河電工(現J2千葉)では9シーズンに渡ってプレーし、引退後はコーチ、監督、強化部長など要職を歴任した。現在は日本代表戦のほか、カテゴリーを問わずスタジアムに数多く足を運び、誠実な人柄で選手や関係者からの信頼も厚い。

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