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【オシムが斬る準々決勝3】若者に頼りすぎ…華麗な王国どこに

[ 2014年7月7日 10:00 ]

倒れこみ、腰を押さえて悲痛な表情のネイマール(AP)

 W杯ブラジル大会は、ベスト4が出そろった。開催国のブラジル、ドイツ、アルゼンチンの優勝経験国と、準優勝3度のオランダで、いずれも世界のサッカー界をけん引する強国だ。元日本代表監督のイビチャ・オシム氏(73)はどう見たか。故障で戦列を離れたブラジル代表のエース・ネイマールにもエールを送った。

 ネイマールは確かにいい選手だが、まだ若く、マラドーナやメッシの域には及ばない。これまではなんとか期待に応えてきたが、彼はあまりにも大きな荷物を背負ってプレーしてきた。ブラジル代表ともあろうものが、20歳を少し出たばかりの、まだ成熟していない若者にばかり頼るとは、という思いだ。

 現代のサッカーは、内容より結果や外見がもてはやされる。それはサッカーというスポーツ、ゲームではなく、マネーが優先される産業になっているからだ。W杯開催国が優勝を目標に掲げるのは当然だが、そのための推進力をネイマール一人に期待するのは気の毒だ。ネイマールはサッカー関係者やブラジル国民の期待ばかりでなく、その背後にいる、巨額の投資とその回収のことばかり考えている人々にも責任を負わねばならないのだろうか。

 チーム内にエースがいるのはよいことだが、特定の個人にのみ頼るのは危険が大きい。ブラジルばかりでなく、これは日本もよく考えた方がいい問題だ。

 ところで、ネイマールを負傷させた危険なプレーに警告すら与えられなかったことは不可解だ。審判も大きなプレッシャーにさらされていることで判断を誤るのだろうか。この大会は首をかしげるような判定が少なくない。

 準々決勝の4試合は本来、W杯でも最も面白い試合が見られるものと言われてきたが、率直に言ってガッカリした。本当に強いチームは、少々調子が悪くても、試合には何とか勝つすべを知っているもの。今大会でも、優勝候補に挙げられている国々はその例にならい、次第に調子を上げてくると思っていた。

 相手の長所を消すことばかりに懸命なチームが少なくない。決勝トーナメントは負ければ終わりの「ノックアウトラウンド」だから仕方がないのだが、負けないこと、失点しないことばかりを優先するのでは、見ていて面白くない。プレーしていてもつまらないだろう。

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2014年7月7日のニュース