×

4年で代表まで駆け上がったメキシコの“シンデレラボーイ”

[ 2014年6月19日 05:30 ]

ブラジル戦で競り合うメキシコ代表MFエレーラ(左)(AP)

W杯1次リーグA組 メキシコ0―0ブラジル

(6月17日 フォルタレザ)
 4年前、ある若いメキシコ人夫婦の間にこんな会話があった(らしい)。

 「いいかげん、サッカーをやめてちゃんと働いてよね。私、妊娠してるんだから」

 「それは嫌だ。サッカーで成功するのが俺の夢なんだ」

 「何言ってるの。アンタの安月給じゃ産婦人科へも通えないじゃない。球蹴りなんかしてないで手に職をつけてよ」

 「待て待て。今から新しい仕事を始めるより、俺がもっといいプレーをする方が現実的だよ」

 4年後、24歳になった夫はW杯のピッチでブラジルと対戦していた。完全アウェーで優勝候補筆頭と引き分けたメキシコのMFエレーラ。後半31分までのプレーながらチーム最多のパス43本を通して攻撃をけん引し、各選手が試合中に走るスピードを低・中・高と分けたFIFAのデータでは中速と高速の割合が先発では両軍トップの計22%と汗かき役も務めた。

 4年前まではメキシコ3部リーグでプレーしていた。しかし、妻を説得したエレーラは翌11年に1部の強豪パチューカと契約。デビューシーズンで前期新人王に輝き、一気に注目を集めた。12年ロンドン五輪のU―23代表に選ばれると決勝でブラジルを破り金メダルを獲得。フル代表にも招集され、13年にはメキシコ人選手として史上最高の800万ユーロ(約11億円)でポルトと契約し、欧州CLにも出場した。

 愛称は「ソロ(キツネ)」。攻撃がショートパス主体のメキシコに、スルーパスやドリブル突破でアクセントをもたらしている。「リケルメのようにプレーしたいと思ってるんだ」。憧れの元アルゼンチン代表MFも五輪金メダリスト。だが、妻を納得させた夫にはリケルメもできなかったW杯制覇という夢がある。

 ▽エクトル・ミゲル・エレーラ 1990年4月19日、メキシコ・ティファナ生まれの24歳。パチューカの下部組織でサッカーを始め、07年から3部で4シーズンプレー。1部パチューカで2シーズンを過ごし、13年に移籍したポルトでは今季リーグ17試合3得点。昨年10月22日の欧州CLゼニト戦では前半6分で警告2枚を受け、CL最速退場記録をつくった。代表通算15試合無得点。1メートル80、72キロ。

続きを表示

2014年6月19日のニュース