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カズ 外資とタッグでアジアにも目を「やり方を変えないと」

[ 2013年5月15日 06:00 ]

カズ特別インタビュー

 バブルが崩壊し、日本の経済状況も90年代とは変わった。大都市圏でもビッグクラブが生まれにくい環境にある。

 「外資を受け入れたり、アジアに展開したり、やり方を変える必要があると思う。海外にはそういうことを専門とする経営コンサルタントがいる。プレミアリーグはそれで成功したんだ。今度、その会社が日本に進出して来るから話を聞こうと思ってる。やっぱりビッグクラブがないとリーグ全体は引っ張れない。マンUがあるから(対戦する)ウィガンが世界に知られていくようにね」

 Jリーグは昨年、東南アジア各国でテレビ中継を開始。新たなマーケットとしてアジア戦略に乗り出した。

 「去年フットサルW杯でタイに行った。りさ子(夫人)の泊まってるホテルに行ったらボーイが“オッ!カズ、ヴェルディ!”ってね。やっぱり当時のV川崎は凄かったんだと思う。今もV川崎の方が有名だと言ってた。アジアでは時間が止まってる。この20年は国内に根付かせることに費やした部分があるけど、記憶に残るチームをつくれなかったという思いもある。今後はアジア全体に目を向けないと。アジアでテレビ放送するのもいい。企業と組んで選手を獲得するのもいいよね」

 近年、Jリーグは観客動員が伸び悩んでいる。カズは切望する。プレー、ルックス、そしてメディアを巻き込む力を持つスター、つまり「第2のカズ」の誕生を。

 「世界的に見たら悪くない。でも日本の文化レベルを考えればもっと動員しないとクラブ経営も大変だし、エンターテインメントの世界では広がっていかない。やっぱりスターが必要なのかな」

 Jリーグが生んだ希代のスターでもあるカズは、カメラを向けられることに喜びに感じ、注目を血肉に変えてきた。

 「プレーだけでなく言動、行動、着てる服からどんな車に乗るか、全てで引っ張れる人、今の選手でテレビカメラに足元からなめられるような人はいないでしょ。じゃ、今の欧州組が日本に残っていれば、と言えばそれも違う。アンチもいるけど、皆に気にされ、愛される存在。例えばゴルフ界では、石川遼君で全てが変わった。そうすると、不思議とライバルも現れる。それも全く別のキャラクターのね。角刈りでサブちゃんみたいな人(池田勇太)がね」

 95年12月、ボスマン判決(EU国籍を持つ選手がEU内では外国人枠外となるなど)により移籍ルールが変更された。新たなスターが誕生しにくくなった背景には有望選手が欧州へ、逆に一流外国人が来日しなくなったという現実もある。

 「ボスマン判決の影響は大きいよ。Jリーグと海外が近くなった。(日本人は)移籍しやすくなったし、ジョルジーニョ、レオナルド、ドゥンガみたいなブラジルの超一流は来なくなった。一流は欧州に、二流はとてつもない金でロシアへ、日本はその下のマーケットになってしまった」

 来季からJ3(J2の下部)も始動する。底辺はさらに拡大され、新たなスターの原石発掘の可能性は広がる。

 「新たに何かをつくるのは簡単、続けることが大事だと思う。今は欧州CLもテレビで簡単に見られる時代で、比較対象はどんどん厳しくなるよね。でもJ3にはJ3のレベルがある。そこでプロが100%のファイトを見せる。そういうことが大切。それにJリーグにだって面白い試合はあるよ。5月3日の東京V―横浜FC戦なんて面白かったと思わない?」

 まだ第2のカズは現れていない。今年で46歳、白髪も目立つ。それでも東京V戦のカズは鼻から流血しながら最後まで闘った。その姿勢は20年前と変わらない。Jリーグをけん引する気概に満ちている。

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2013年5月15日のニュース