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福島UTD 昇格JFLで“快幕”復興&J参入へ1勝!

[ 2013年3月11日 06:00 ]

<町田・福島>前半9分、決勝点となるゴールを決め雄叫びを上げる福島・鴨志田(右)

JFL第1節 福島ユナイテッド1-0町田

(3月10日 町田)
 今季からJFLに昇格した福島ユナイテッドが10日、敵地での開幕戦で町田ゼルビアと対戦。前半9分、MF鴨志田誉(27)の決めた1点を守り抜き1―0で初勝利を挙げた。11日で東日本大震災から丸2年。Jリーグ参入を目指すチームは地震と福島原発事故で被害を受けた地元に希望を与える復興のシンボルとして大きな一歩をしるした。

 試合終了のホイッスルと同時に時崎監督は両手でこぶしを何度も握りしめた。昨年の全国地域リーグ決勝大会で準優勝して昇格を決めたばかりの1年生。それが昨季J2を経験した町田を撃破し「試合前、選手には“3月11日にいいニュースを届けられるようにしよう”と気合を入れて送り出した。ぜひ大きく取り上げてください」と声を震わせた。

 「人の心に訴えるサッカーをしたい」。震災をきっかけに、その思いを強くしたという福島県出身の時崎監督の指示で、選手は前半から積極的にシュートを狙った。前半9分、鮮やかなワンツーから鴨志田が右足で先制のゴール。攻め立てた前半は風上、後半も突然風向きが変わって再び風上になる運も味方にし、1点を守り切った。

 2年前の震災でチームは存続の危機に陥った。自らも被災した時崎監督は避難所で食べ物の取り合いや大人が子供に当たり散らすピリピリした雰囲気を味わい「あの時は正直チームを構う状況じゃなかった」と振り返る。スポンサーは3分の1に減少。選手の生活資金源となるスクールの運営すらままならず、7選手がチームを去り、残る選手の契約も保留になった。

 立ち上がったのが当時、運営を手伝っていた現社長の鈴木勇人(はやと)氏(40)だった。役員会でも撤退すべきとの意見が出るなか、炊き出しのボランティアを行った際に「なくなっちゃうの?」と涙目で聞いてくる子供の姿を見て存続を決断。「子供たちは不安で夢を見いだせない。自分たちが一歩踏み出し頑張る姿を見せたい」。一級建築士としていわき地区の復興に携わる一方、スポンサー集めに全国を奔走した。昨季8000万円だった運営費は今季倍に増え、来季から新設されるJ3参入に向けJリーグへの申請も済ませた。

 今年は本拠地が除染のため使用できず、県内5カ所をやり繰りして試合を開催。練習場の確保も容易ではなく、試合前日の10日は近所の公園で練習した。ユニホームの胸と背中のスポンサーもまだ決まっていないが、それでも前を向かなければならない使命がある。「元気と勇気を与える。それが僕らの存在価値だと思う」と時崎監督。復興を支える力になるため、残り33試合を全力で戦う。

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