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カズ独占激白「もっと突き詰めたい フットサルの50センチ」

[ 2012年11月9日 06:00 ]

日本人サポーターの持つ地元チームのユニホームにサインして記念写真に収まるカズ

フットサルW杯タイ大会

 カズが激白した。フットサルW杯タイ大会に出場している日本代表は7日に史上初の決勝トーナメント進出を決めた。そのムーブメントの中心にいる三浦知良(45=J2横浜FC)が、フットサルへの敬意、競技の奥深さ、W杯という舞台と向き合う日々について熱く語った。日本代表は11日の決勝トーナメント1回戦でA組1位のウクライナか、B組1位のスペインと対戦する。
【フットサル日本代表メンバー 決勝トーナメント日程】

 カズは言った。日本代表として初の決勝トーナメント進出を決めた達成感は感じても、自らの実力に対する達成感、納得度はまだないと。元ボクシング世界ヘビー級王者のムハマド・アリを敬愛するカズは大好きなボクシングに例え、自身の現在地を語った。

 「僕はまだフットサル日本代表に合流して3週間でW杯の舞台に立っている。まだ右ストレートの打ち方や、パンチのよけ方を教わっているうちに世界戦のリングに立っているようなもの。この大会中に実力的な達成感は得られないと思う。でも自分の役割は理解している」

 むろん、ピッチ上の自分のプレーに一切のエクスキューズはしない。1日1センチでも1ミリでも前へ、カズは進もうとする。

 「毎朝、コーチと一緒に試合の映像を見て勉強してるよ。同じ形でもゴール前とセンターサークル付近ではポジショニングは変わる。それも50センチ単位で。あのスピードの中で、すぐに完璧にするのは無理だよ。ビデオみたく、いったん停止できればいいけど」

 そんなカズを支え、モチベーションとなっているのが仲間の声だ。

 「それでも(ロドリゴ)監督や周りの選手が“こんな短期間でここまで上達する人はいない”“サッカーの人でここまで謙虚になれる人はいない”って励ましてくれる。でも僕は職人だからね。ここまで来ると、もっとフットサルを突き詰めたい。そういう欲求が出てきちゃうよね」

 タイ入りして12日が過ぎた。異国でのホテル暮らし、初めてのW杯という独特の緊張感さえ、カズは楽しんでいる。毎日、メニューが同じ食事も、持参したオリーブオイルとビネガーで味付けして、自分流にアレンジすれば問題ない。

 「ブラジル時代なんて(水道から)最初、茶色の水がザーッと出て、やっと透明になった水をガブガブ飲んでたからね。ベッドでは首から下、全身をダニにかまれて、それが化膿(かのう)して病院にも行った。でも4カ月もすれば血の味がブラジル人と同じになったんだろうね。ダニにもかまれなくなった。免疫ができたんだよ」

 壮絶な経験値。これこそが、カズのカズたるゆえんだ。他の選手にはない芯の強さがある。W杯に入っても、試合を迎えるスタンス、姿勢は普段と変わらない。

 「それが経験なんだと思う。昔は背負ってばかりで、やってやるぞって気持ちが強すぎた。今も同じように背負うけど、できないものは仕方ないって思える。だからできることをやろうと。クロアチア時代(99年クロアチア・ザグレブ=現ディナモ・ザグレブ=に在籍)からだね。サッカー観みたいなのが変わったのは」

 くしくも98年W杯フランス大会開幕直前に経験した代表落選の悲劇と、サッカー観が変化した時期は符合している。

 「自分が入って1次リーグ突破というのは最低条件と思っていた。もっと上に行きたいと思う」

 日本フットサルの歴史は動いた。11日、フットサル日本代表は初の決勝トーナメントを戦う。その先頭にカズは立っている。

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2012年11月9日のニュース