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復興への祈り込めたゴール!届け勇気のカズダンス

[ 2011年3月30日 06:00 ]

<日本代表・J選抜>後半36分、闘莉王のアシストからゴールを決めたカズが復興のカズダンス

東日本大震災復興支援チャリティーマッチ 日本代表2―1Jリーグ選抜

(3月29日 長居)
 カズが希望の1点を決めた。東日本大震災の復興支援試合は大阪・長居スタジアムに4万観衆を集めて行われ、日本代表が2―1で勝った。最大の見せ場を作ったのはJリーグ選抜のFW三浦知良(44=J2横浜FC)だ。後半途中から出場したカズは0―2の後半37分に右足で鮮やかにゴール。試合前に両チーム主将がメッセージを発信、全員が黙とうし、喪章をつけてプレーした一戦で千両役者が被災者に勇気を与えた。この試合の収益は全額、被災地支援のため寄付される。
【試合結果】

 腰をくねらせ、軽やかにステップを踏んだ。カズダンスに大歓声が起こる。左手を股間にあて、被災地復興への祈りを込めて、右手人さし指を天高く突き上げた。「やっていいのか、迷いがあった。でも日本中が少しでも明るくなってくれれば、と。微力ながら踊らせていただきました」。被災者の気持ちを考え、逡巡(しゅんじゅん)もあった。しかし、明るく振る舞うことが復興への第一歩になると強く信じた。

 やはり千両役者だ。「今でも憧れ」と話す日本代表との真っ向勝負。ピッチに立ったのは後半17分。0―2で迎えた後半37分。DF闘莉王が頭で落としたボールに走り込んだ。

 ここからが真骨頂だ。「前半からカズコールは聞こえていた。でもあまりゴールを強く意識すると硬くなるからね」。決定機に無心になれる。正確に右足を振る。希望を運ぶ放物線はゴール右隅に消えた。

 その瞬間、敵味方の垣根は消えた。サッカー界が一つになった。ゴールを奪われたGK東口は「GKとしてはダメだけど、いい思い出になる」と勝敗を忘れた。MF中村俊は「一番(復興への)気持ちがあるから(カズに)ボールが転がってくる」と“サッカーの神”に感謝した。FW佐藤は「鳥肌が立った」とうなった。

 そんなカズも実は人知れず葛藤していた。この時期にサッカーの試合をやるべきなのか。小笠原や関口から聞く被災地の現状は耳をふさぎたくなるものばかり。「生き抜くという勇気をもらっているのは僕らの方かもしれない。今、被災地に必要なのはサッカーではなく医療や食料などの物資のはず。でも僕が現地で炊き出ししたりすることはできない。サッカー選手は全力でプレーするしかない」。自分にそう言い聞かせていた。

 東北に知人の少ないカズは震災後、95年の阪神大震災を経験した神戸の知人と積極的に連絡を取っている。被災地の苦しみを肌で感じるためだ。「彼らは被災地に何が起きているか、何が必要かを冷静に教えてくれる。まだ節約の意識だって根付いている」。さしっ放しだったコンセントを必ず抜くなど節電の意識も高くなったという。

 世界に中継された一戦で大きな仕事をやってのけた。「44歳になったけど、僕はサッカーで諦めたことは一度もない。今、苦しんでいる人も絶対に諦めてほしくない。そういう思いでプレーしました」。その思いは東北の空にも届いたに違いない。

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