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追悼 鉄腕エース稲尾

<最終回>あなたは「天才」のサイちゃんでした

 寛容で「NO」といえない人だった。

 どんな無理なお願いでも「そうかあ、わかった」と聞いてくれた。

 振り返ってみると印象に残る思い出がいくつかある。中でも山口の温泉での思い出がいま懐かしくよみがえってくる。

 「翌朝、大阪で名球会のゴルフなんだ」と過密スケジュールの稲尾さんにゴルフ前日の講演をお願いした。

 講演が終わって大阪入りしたい、という稲尾さんが関係者との「懇親会」まで付き合い急遽、山口に1泊することになった。

 ゴルフに間に合うには早朝4時に宿を出なければならない。稲尾さんは定刻近く部屋を出た。寝ぼけ眼で見送り、再び眠りにつくと30分も経ったろうか、部屋のインターホンが鳴った。出ると稲尾さんが立っていた。

 「靴はくのを忘れてタクシーに乗ったんだ」という稲尾さんの足元を見ると背広にスリッパというスタイル、途中で気づき引き返してきた、とテレくさそうに頭をかいていた。

 「人間・稲尾」が色濃く出ているエピソードに思うが、だからこそ「NO」といわず、13試合連続登板、1シーズン42勝という信じられない連投や記録を残したのだろう。

 右手に強靭な足腰と抜群の野球センス、左手にやさしさと寛容さ、両手に握り締めて歩いた70年の人生だったろう。

 目が細く動物のサイに似てるところから「サイちゃん」のニックネームで親しまれた。しかし「投手・稲尾」も「人間・稲尾」にも天賦の才(サイ)を感じる。

 天国の稲尾さん、あなたは素晴らしい人でした。あなたは「天才」のサイちゃんでした。(元西鉄ライオンズ担当記者・新貝 行生)

=終わり=

[ 2007年12月21日 09:43]

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