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月刊J 大分躍進3つの秘密

 大分が新たな歴史を刻んだ08年を終えた。94年に県リーグから歩みを始め、15年目の今年、ナビスコ杯で悲願の初タイトルを獲得。リーグ戦でも初の首位に立ち終盤戦まで優勝戦線に食い下がって過去最高の4位。リーグ戦平均失点は0・71を叩き出しJ1記録を大幅に更新。群雄割拠のJリーグに風穴を開けた大分の戦いを総括する。

 「青き牙城」。今季の大分はまさにこの言葉そのものだった。リーグ戦34試合で24失点、実に半数の17試合が無失点。先制した試合は15勝1分け無敗。06、07年に浦和が作った1試合平均失点の年間記録0・82を大幅更新する0・71の新記録を樹立した。シャムスカ監督も「今季最大に良かったこと」と、ナビスコ杯初タイトルに並ぶ“勲章”に挙げた。

 守備の戦術の基本はシンプルだ。対人に強い上本、深谷の左右ストッパーが相手FWのマークに付き、リベロの森重がカバーに回る。バイタルエリア(ペナルティーエリア手前の危険な地域)はホベルト、エジミウソンの両ボランチが固め、3バックの両わきに開くスペースは鈴木、高橋の両サイドハーフが状況に応じて最終ラインまで下がって消す。相手ボールになればトップ下の金崎まで自陣に下がって数的優位を作り、ゴール前に分厚い壁を形成して、相手の攻撃を跳ね返した。

 強いフィジカルと有機的なカバリングに裏打ちされた「堅守」が今季の躍進の第1ポイントなら、第2は「勢い」だ。その象徴が金崎。高卒2年目で開幕スタメンをつかむと、第2節から3戦連発。得点こそリーグ戦・カップ戦通じて4得点にとどまったが、ナビスコ杯決勝では2アシストも記録し、ニューヒーロー賞を受賞。夏にはJOMO杯オールスター戦初出場、A代表候補合宿にも招集されるなど、12年ロンドン五輪世代の中心選手に飛躍した。

 開幕前の金崎は今季チームのウイークポイントと懸念されていた。梅崎が浦和に移籍し、代わって入った家長の故障で出番が回ってきた「代役の代役」。重圧に加え、滝川二時代から守備に課題を抱えていた。だが短所にとらわれず「常に前を向く姿勢が良い」と獲得した原強化部長同様、シャムスカ監督もその攻撃的な姿勢を何よりも買った。守備はハードワークで鳴らすブラジル人の両ボランチにバックアップさせ、金崎には自由に攻撃参加させる。長所を最大限に生かされた19歳はゴール、アシストを重ねるごとに加速度的に勢いを増し、チームの起爆剤として花開いた。

 第3のポイントは「ユーティリティー」。今季登録選手28人はJ1で2番目に少ない。世代別の代表招集や故障者、出場停止もあり、開幕前に予想されたベストメンバーで臨めた試合はほとんどない。生じた穴は万能型の控えが埋めた。

 筆頭は藤田。06年まで在籍した千葉ではDFとして2年間で出場5試合。1年間の期限付き移籍を経て完全移籍した今季、負傷離脱の高橋に代わって開幕から右サイドに入り、5月に深谷、7月に上本が出場停止になると左右サイドバック。森重を五輪で欠いた夏場はセンターバックへ。エジミウソンが故障した9月は第2ボランチ、ナビスコ杯決勝は出場停止の鈴木に代わって左サイドに入り、終盤戦はホベルトの負傷離脱の穴を埋めて第1ボランチと、7つものポジションを務めた。

 J1クラブの07年度営業収入は浦和が79億円、鹿島が39億円、大分は22億円。シャムスカ監督の掲げる「1人2役」にとどまらず、何役もこなせるユーティリティープレーヤーの存在は経営的にもプラス。チームの安定をピッチ内外で支えた。

 最終戦後、シャムスカ監督は「来季の課題は攻撃のシステムを作ること。それができればリーグ優勝は十分狙える」と明言し、原強化部長も「恒常的に優勝争いするチームづくりの原型ができた」と手ごたえを明かした。契約更改は始まっているが、主力はほとんどが残留する見込み。持ち越されたリーグ初戴冠を最大のモチベーションに、来季の大分はさらなる進化に向かう。

 ≪1月31日始動≫天皇杯で敗退し、すでにオフに入った大分だが、来年の始動は例年と変わらない1月31日となる予定。ナビスコ杯覇者として2月18日開幕のパンパシフィック選手権(米国ロサンゼルス)に出場するため、地元大分で第1次キャンプ後、現地で第2次キャンプを張って調整する方向だ。

 <J2熊本>他チームより1週早かった最終戦こそ優勝の広島に惜敗したが、そこまで8戦連続負けなしを記録。11月23日の敵地・山形戦はドローでJ1昇格決定を阻み、J2参入元年に全チームから勝ち点を奪って、12位で終了した。得点王争いでもFW高橋が広島FW佐藤の28得点に次ぐ19得点で2位。一方で開幕前に池谷監督が「JFL2位がJ2でどこまで通用するか」とあえて補強なしで懸けた戦力見極めの結果は、元日本代表DF上村、DF有村らベテラン4人が現役引退、6人が戦力外。来季は大幅な世代交代に踏み切る。参入時に掲げた「5年でJ1昇格」の夢への第2段階が始まる。

 <J2福岡>ラスト2戦連勝で3カ月間抜け出せなかった9位から1つ上げたが、それでも過去ワーストタイの8位。2年連続昇格失敗どころか“Bクラス転落”で終えた。クラブは11月30日、混乱の中でチームを支えてきた主将のMF布部に戦力外を通告。MFタレイも退団し、新規スポンサー獲得の難航で来季運営費は約2億円の削減が見込まれ、複数J1クラブが獲得に乗り出すDF中村、レンタル組のFW大久保、FWハーフナー・マイクら他の主力も流出危機にある。「限られた予算の中でどれだけ選手を抱えられるかがクラブの明暗を分ける」。篠田監督が訴えた今冬の課題は、あまりに厳しい。

 <J2鳥栖>天皇杯8強進出の勢いを駆って昇格圏浮上を狙った最下位・徳島戦で、まさかの返り討ちに遭い、完封負け。ホーム最終戦で直接対決した仙台の3位確定こそ阻止したが、最終戦を落とし、悲願の入れ替え戦進出はならなかった。ただJ参入10年目で初の開幕戦勝利に始まり、序盤戦のダッシュ、最終節まで昇格争いに加わり、年間順位も06年の4位は超えられなかったものの6位と、初めて宿敵・福岡より上位で終えた。岸野監督は「今年はこれで十分。今は足元を固めないと」。大分、神戸とJ1連破で初進出した20日の天皇杯準々決勝では、横浜に挑む。08年シーズンはまだ終わらない。

[ 2008年12月17日 09:48]

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