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柚希礼音が好演!星組公演「愛するには短すぎる」と「ル・ポァゾン 愛の媚薬U」開幕


星組公演ミュージカル「愛するには短すぎる」フレッド役・柚希礼音(左)とアンソニー役の凰稀かなめ(C)宝塚歌劇団
 

 柚希礼音(ゆずき・れおん)を中心にした星組による名古屋・中日劇場公演、ミュージカル「愛するには短すぎる」(小林公平原案、正塚晴彦脚本、演出)とロマンティック・レビュー「ル・ポァゾン 愛の媚薬U」(岡田敬二作、演出)が1日開幕した。今回はこの模様を中心に報告しよう。

 

 「愛するには――」は、2006年に退団した元星組トップ、湖月わたるのサヨナラ公演のための作品の再演。初演には柚希も脇で出演していた。今回はもちろん柚希が主演。1930年代、大西洋航路の4日間の船旅での出来事を描いたロマンティックコメディだ。柚希扮するアメリカ人資産家の養子フレッドは、婚約者ナンシーとの結婚が決まり、留学先のロンドンからニューヨークに帰ることに。その帰りの船旅のなかでのお話だ。原案を書いた小林氏が昨年亡くなったことからその追悼の意味も込めた再演だ。

 

 フレッドが船のデッキで幼いころの夢を見るところがプロローグ。夢にでてきた幼なじみのクラウディア(夢咲ねね)がバーバラという名前で偶然船に乗っていたことから、これまで何の疑問もなく生きてきたフレッドの心にさざ波が立つ。

 

 柚希は「再会」に似た役どころだが、おっとりした持ち味が金持ちのおぼっちゃまが実によく似合う。いま、こういう役が出来る男優はいるだろうかと思うと存在自体が貴重に思える。それが作品自体の持つ懐かしいアメリカンミュージカルのテイストにぴったりあって、見ていて実に心地いい舞台になった。

 

相手役の夢咲も、役を自分に引き寄せながら自然体で演じるのがうまくなり、今回も、女優を夢見るドサ回りのダンサーという役どころを、等身大で見事に演じている。

 

 初演の安蘭けいの名演が記憶に残るフレッドの親友役アンソニーに扮した凰稀かなめも、柚希とともにのびのびと演じ、二人の息もよくあっていて、湖月、安蘭に勝るとも劣らない旬の魅力にあふれている。

 

 初演で柚希が演じたバーバラのバンド仲間フランクは夢乃聖夏。押し出しの効いた演技が印象的だった。和涼華が演じていたマネジャー役に麻央侑希が起用されたのも注目。ややスリムになりセリフも男役らしくなってきた。資質がいいだけに今後に期待したい。

 

 執事オサリバン役の未沙のえるは相変わらずのうまさ。アドリブもきかせて爆笑を誘う。ハードボイルドでもなんでもないが、この作品、最近の正塚氏の作品のなかでは一番のヒットだったことが改めて確認できた。

星組公演ロマンティック・レビュー「ル・ポァゾン 愛の媚薬U」柚希礼音(右)と夢咲ねね(C)宝塚歌劇団

 「ル・ポァゾン――」も1990年に月組で初演された岡田レビューの再演。なんで今、という気持ちもなくはなかったが、踊れて歌える柚希というスターを得られたことの幸せもあるが、これがまた最近にない充実したレビューだった。

 

 プロローグからフィナーレまで、決まりきった定番レビューが多い中、この作品はまさにページをめくるようにさまざまな場面がメリハリを利かせて次から次へと展開していく。柚希の切れのいいダンスがふんだんに見られるのもうれしい。

 

 日向薫、紫苑ゆう時代の星組公演「ナルシス・ノワール」からの場面も2場面あり、とりわけ「愛の葛藤」のスパニッシュが懐かしい。日向と紫苑が踊った名場面だが、謝珠栄氏が、柚希と凰稀のために新しく作り直したという振付もフレッシュで見応えがあった。

 

 柚希を中心にした男役ダンサーたちの純白の燕尾服の群舞も珍しかったが、ラインダンスのあとフィナーレの柚希、夢咲、凰稀の3人が韓国のヒット曲「アシナヨ」に乗って歌い踊るフィナーレもゴージャスだった。凰稀の宙組への組替えでこのトリオは今回が最後となるが、そういう意味でも非常に贅沢な公演でもあった。

 

 さて、次回は5日更新の予定で花組宝塚大劇場初日の模様をお伝えします。お楽しみに。(薮下 哲司)



● 薮下 哲司(やぶした・てつじ) ●
大阪府生まれ。関西大学文学部仏文科卒。71年スポーツニッポン新聞大阪本社入社。77年文化部に配属、放送、音楽などを担当後、現在、特別委員として映画、演劇を担当している。宝塚歌劇は80年から担当、劇団発行の「宝塚グラフ」バウ公演評「歌劇」新人公演評を歴任。著書に「宝塚の誘惑」(共著)「宝塚伝説」「宝塚伝説2001」「宝塚歌劇支局」(青弓社刊)がある。05年、毎日文化センター(大阪)で「タカラヅカの魅力」講座を開設、07年から甲南女子大学非常勤講師に、宝塚講座を持っている。

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