スポニチ大阪

安蘭、遠野、柚希の健闘が成功の最大要因 星組「スカーレット・ピンパーネル」


イギリス人貴族のパーシーを好演する安蘭けい(C)宝塚歌劇団

 
  安蘭けいを中心とする星組公演、ミュージカル「スカーレット・ピンパーネル」(小池修一郎潤色、演出)が宝塚大劇場で開幕した。今回はこの公演の模様を中心に報告しよう。

 「スカーレット・ピンパーネル」はオルツェ男爵夫人の原作による世界的ベストセラーの舞台化で宝塚でも「紅はこべ」のタイトルで松あきら時代の花組と真矢みき時代の花組で2度上演(柴田侑宏演出)されている。今回のミュージカルは1997年にブロードウェーで初演されたものをもとに小池氏が宝塚的に大幅にアレンジ。音楽のフランク・ワイルドホーン氏が宝塚のために新たに2曲を書き下ろし、グレードアップして出来上がった。曲がどれも素晴らしく、安蘭はじめ星組メンバーの熱演もあって見応え聴き応え十分、宝塚ならではの豪華で大がかりな仮面舞踏会や群衆シーンなどのスペクタクルもあって大満足の舞台に仕上がった。

 時は1794年。あのバスチーユから5年後。ルイ16世とマリー・アントワネットは処刑され、ジャコバン党のロベスピエールの独裁が続いていたころ。パリでは革命政府に捕らえられた貴族を秘かに国外に逃がす「スカーレット・ピンパーネル」と名乗る男が、老人に変装してきょうも2人の貴族の女性を荷車に乗せて脱出させることに成功した。銀橋から登場した小汚い老人が、かつらとヒゲをとり、コートを脱ぐとさっそうとした美青年に早変わり。のっけから人を食った安蘭の登場ぶりだが、そのあとの新曲「ひとかけらの勇気」のソロが素晴らしく、一気に引き込まれる。

 安蘭が扮するのはイギリス人貴族のパーシー。貴族というだけで処刑される理不尽さを見過ごすことが出来ず、パリに現れては「スカーレット・ピンパーネル」として多くの貴族を救い出していた。その「スカーレット・ピンパーネル」の正体を突き止めようと躍起になるのが柚希礼音扮する公安委員ショーヴラン。この2人と遠野あすか扮するコメディ・フランセーズの女優マルグリットとの愛憎劇を縦軸にルイ16世の王太子シャルル(水瀬千秋)救出作戦を横軸としてスケール感豊かに展開する。

 革命後の混沌とした時代背景がうまく描かれているのと、パーシー、ショーヴラン、マルグリットの大人の三角関係ドラマがベースにあることもあって、変装をメーンとする荒唐無稽なストーリー展開がそれほど突飛に見えず、本来は他愛のない西洋チャンバラなのだが、いかにも上質のエンターテインメントに仕上がっている。なんと言ってもワイルドホーン氏の音楽が魅力的で、それを堂々と歌いこなした安蘭、遠野。そして柚希の健闘ぶりが成功の最大の要因だろう。  


 安蘭は、老人や変な外国人などの変装に、毎回アドリブを交えたユーモアたっぷりのパーシーなど様々な顔を達者に演じ分け、よく伸びる歌声も見事で、まさしく代表作の誕生といっていい。

 遠野も登場シーンから透明感のあるソプラノを聴かせ、宝塚の娘役演技とはひと味違った恋に揺れる大人の女性を的確に表現した。

 柚希は、初の悪役への挑戦で、眉間にしわを寄せ、強面を強調しているが、まだまだ一面的でふとしたときに人の良さがのぞくのが弱い。場数を踏むことによって自然とにじみ出るすごみを期待したい。

 3人以外では和涼華扮するマルグリットの弟アルマン。夢咲ねね扮するその恋人マリーがストーリーに絡んでくる主要な登場人物。若々しく純粋なカップルとして3人との対照ともなっており、和、夢咲のフレッシュなコンビがぴったりだった。

 立樹遥と涼紫央はパーシーの良き理解者であり協力者であるイギリス貴族役。この2人が、安蘭の回りにいることによって舞台に厚みと華やかさが匂い立った。決して役の多い舞台ではないが、アンサンブルが勝負の作品でもあり、ダンス、コーラスと星組の底力がまざまざと感じられる舞台だった。

 フィナーレナンバーも剣をもった男役の群舞があり、安蘭に続いてセンターを踊る柚希の超絶テクニックが見事に決まるなどなかなか見応えがある。

 初日終了後は熱烈な拍手が巻き起こり客席は一気にスタンディング、挨拶にたった安蘭もこれには大感激だった。「最後のお客様の拍手でとても手応えを感じています」と充実の表情を見せていた。また初日を観劇したワイルドホーン氏も「男性歌手のためにわざと難しく書いた歌を見事に歌いこなしていた」と絶賛していた。


 さて来週更新は宙組宝塚バウホール公演「殉情」初日の模様を報告します。お楽しみに。(薮下哲司)


● 薮下 哲司(やぶした・てつじ) ●
大阪府生まれ。関西大学文学部仏文科卒。71年スポーツニッポン新聞大阪本社入社。77年文化部に配属、放送、音楽などを担当後、現在、特別委員として映画、演劇を担当している。宝塚歌劇は80年から担当、劇団発行の「宝塚グラフ」バウ公演評「歌劇」新人公演評を歴任。著書に「宝塚の誘惑」(共著)「宝塚伝説」「宝塚伝説2001」「宝塚歌劇支局」(青弓社刊)がある。05年、毎日文化センター(大阪)で「タカラヅカの魅力」講座を開設、07年から甲南女子大学非常勤講師に、宝塚講座を持っている。

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