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九国大ウエートリフティング部

 【福田監督イチ押し 東京の星・柳田瑞希】

 九州各県、山口の大学、高校の部活動に焦点を当てるスポニチキャンパス。今回は福岡県北九州市の九州国際大ウエートリフティング部に注目した。12年ロンドン五輪代表の太田和臣、16年リオデジャネイロ五輪代表の高尾宏明を輩出した強豪。福田登美男監督(49)に導かれ、20年東京五輪を目指して汗を流す女子の柳田瑞季(24=九国大職員)に迫った。

ガッツポーズをする九国大ウエートリフティング部

 まぶしい笑顔がトレードマーク。柳田が20年東京五輪を見据え、一歩ずつ着実にパワーを蓄えている。「まだまだ強い選手がたくさんいる。五輪を目指すなら、日本のトップに立たないといけない。もっと自分に厳しく、精神的にも強くなりたい」と向上心は高い。

 重量挙げは、文字通り持ち上げたバーベルの重さを競う。床から一気に持ち上げる「スナッチ」、いったん胸前、肩付近で保持してから頭上にあげる「クリーン&ジャーク」の2種類があり、その合計で争う。

 柳田は14年の世界大学選手権で銀メダルを獲得。卒業後も職員として大学に残った。日中はデスクワークをこなし、競技を続けて3年目になる。今年5月に栃木県で行われた全日本選手権48キロ級でスナッチ74キロ、クリーン&ジャーク93キロで優勝。福岡県勢で初めて、もちろん九国大にとっても初めての快挙だった。当日は本番前の練習から1回も失敗がなく「自信があった」と振り返る。

 部員46人の九国大ウエート部は練習時間が1日2時間程度。“日本一短い”と評される。「長くやっても効果がない。集中が続かない」という福田監督の考えからだ。あえて短時間に制限することで、毎日の練習には本番に近い緊張感が漂う。柳田も「試合のときと同じ感じで、凄く集中できる」と効果を実感。集中力が結果を大きく左右する競技だけに実践的な方法だ。

東京五輪を狙う柳田

 社会人1年目の15年は、学生時代に比べて練習時間が自然と少なくなった。「短い時間でより集中してやる練習になった。ケガもしなくなった」。練習開始から30分間は体幹トレーニングなどに費やす。バーベルを持つまでに時間をかけるのがルーティンだ。現在のベストはスナッチ77キロ、クリーン&ジャーク96キロまで伸びた。

 現在も実家暮らしでトイプードル1匹、シーズー犬2匹とたわむれるのが至福の時だ。オシャレに対しては無頓着という。社会人になり「一応、やった方がいいのかな?」と慣れない化粧にチャレンジしたものの、監督から「変だぞ」とちゃかされた。それ以降、練習だけでなく仕事中も“すっぴん”を貫き「どうせ崩れる。興味がないから良かった」と笑う。体づくりも強くなるために必要で食欲は旺盛。「牛タン10人前とか、普通に食べます」という牛肉好き。バーベルを上げるパワーの源になっている。

 現在は10月の国体へ向け調整中。試合前の計量を48キロぎりぎりでパスすべく、体重もコントロールしていく。2大会連続で五輪に選手を送り込んだ福田監督は「20年は柳田」と期待を込める。同じ92年生まれで五輪出場した八木かなえ、安藤美希子の2人とはLINEなどで交流している。「(2人の存在が)励みになる。“私も”と思います」と自身が晴れ舞台に立つ姿を描いている。

お気に入りのピンクのネイル

 ≪オシャレ無頓着でも…爪割れ防止、ピンクのネイルはお気に入り≫福田監督が「10年近く見てきているけど、初めてですよ」と驚く。最近、柳田に起こった“変化”はピンク色で統一されたマニキュアだ。本人は「ちょっと興味があった。競技に支障がないと聞いていたし、爪を強くしたかった」と笑みを浮かべる。監督の許可を得て、2カ月前から始めた。爪が割れないよう保護するため、ロンドン五輪銀メダル、リオデジャネイロ五輪銅メダルの三宅宏実もマニキュアを施していたという。「派手かな…とも思ったけど、一回やるといい」とお気に入りだ。

 ◆柳田 瑞希(やなぎた・みずき)1992年(平4)9月5日、福岡県北九州市小倉南区生まれの24歳。八幡中央高を経て九国大、九国大職員。座右の銘は「努力は裏切らない」。好きな男性のタイプは「優しくて面白い人」。身長1メートル51。

 ▼九州国際大 福岡県北九州市八幡東区平野1丁目にある私立大学。1930年(昭5)創立。50年に新制大学の八幡大として設置。89年から現校名に変更。法学部、現代ビジネス学部、経済学部、国際関係学部がある。主なOBは川島慶三(プロ野球・ソフトバンク)松山竜平(プロ野球・広島)ら。JR鹿児島本線・八幡駅から徒歩8分。

【男子にも逸材 1年・前田、アクロバットで培った高い身体能力】

抜群の身体能力を誇る期待の1年生・中村

 男子も負けていない。八幡中央高出身の前田魁(かい、1年)は右肩上がりの成長曲線を描いている。

 「絶対にこれは上がらんやろな…という重量でも、日々練習していくうちにクリアできる面白さがあります」

 競技を始めたのは中学時代。ロンドン五輪出場経験を持つ太田が学校へ講演に訪れた際に、同行していた八幡中央高の先生から薦められた。水泳部所属だった前田は、バック転などアクロバットをこなす身体能力を見込まれた。練習期間わずか3カ月にして、全国中学校大会で3位入賞。「もっと、上を目指そう」と、のめり込んだ。現在のベストはスナッチ101キロ、クリーン&ジャークは132キロ。バーベルを上げるには、ジャンプ力が必要で「(アクロバットを)やってて良かった。水泳続けていたら違う人生になってました」と苦笑する。

 将来の夢はボートレーサーだ。体が大きくなり過ぎて競艇選手になれなかった父の影響だ。実際にボートレース場へ足を運び、興味を持った。「こういうところで走って、お金もうけして、親孝行したい」と未来図を描いている。

【中学では美術部 高3ホープも練習中】

来春入学予定の上ノ瀬も練習に参加

 来春入学予定の上ノ瀬彩花(福岡光陵高3年)は1~2カ月に1度、練習参加しているホープだ。7月に全国高校女子選手権で全国大会初優勝を飾った。「先生方に、少しは恩返しができた」と笑みがこぼれる。

 中学は美術部。高校入学当初は水泳部だった。しかし、九国大ウエート部OBで福岡光陵高教諭の信原正弥さんが“廃部から復活させたい”という声に転身を決意したという。大学での目標も明確だ。「アジア大会に出て20年でも24年でも、五輪の候補生に選ばれたい」と力強かった。

【太田、選手と指導者で「二足のわらじ」】

後輩を指導する太田(右)

 パワー健在だ。12年ロンドン五輪に出場した太田は八幡中央高で教壇に立ち、同校ウエートリフティング部を指導して2年目。自らも競技を続けている。

 「状態を10段階で表せば“5”ぐらい。バーベルを触ったら重たくて“うわ~ッ!”て思うんで」

 理由がある。リオデジャネイロ五輪を翌年に控えた15年11月に右大腿四頭筋を断裂。2大会連続の五輪出場を諦めざる得なかった。手術せずに自然治癒を選択し、約8カ月間のリハビリをこなした。20年東京五輪へ向け、今夏の国体予選で2年ぶりに大会に復帰。ブランクを感じさせず、190キロを記録した。高校の部活動がない日には、大学でも後輩たちを指導している。

 ここ一番の集中力は凄い。「声は何も聞こえなくなる。人が寝入る瞬間に似てますね」と笑う。太田を指導した福田監督が「モノが違う」と評す31歳。東京五輪については「あんまり考えない。一個一個の積み重ね」と足元を見つめ、着実に歩む構えだ。

[ 2017年8月31日 ]

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