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九産大野球部

 【もう一度全国制覇!05年明治神宮大会以来の栄光再現だ】

 九州各県や山口の大学、高校の部活や注目選手を応援するスポニチキャンパス。今回は九州産業大野球部の登場だ。現役時代は捕手一筋だった大久保哲也監督(54)がキャッチャー目線を生かして250人超の大所帯を率いる。1年秋から首位打者に輝いた岩城駿也内野手(3年=経営学部)を中心に再び全国制覇を狙う。

九産大野球部、この日そろったメンバーは全体の20%ほど

 扇の要とも呼ばれる捕手。その存在がクローズアップされる、きっかけの一つは野球漫画・アニメ「ドカベン」だろう。

 ♪気は優しくて、力持ち、明るい笑顔が今日もいく~

 アニメのオープニングテーマは主人公の山田太郎を称えたもの。そのドカベンより細身でダンディーながら、情熱では決して負けない指揮官が九産大野球部を率いる。大久保監督は競技を始めた長崎県諫早市の飯盛中時代から、ずっとキャッチャー一筋だった。

 「たまたま、やるやつがいなかっただけ。本当はピッチャーをやりたかったんですよ。痛いし、試合に負けたら責任を負わないといけない。だから、このポジションを面白いと思ったことはないですね。でも与えられた役割、責任を果たさないといけない」

 捕手は唯一、バックスクリーンと正対し、仲間の8人を見渡せる守備位置。投手はもちろん、チーム全体への目配り、気配りを求められる。長崎の強豪・海星高から九産大を経て、社会人の三菱重工長崎でコーチ兼任も含め14年間プレー。「ずっと結果を残さないといけないチームでやってきましたから。一生懸命にやって、成果を出せれば達成感は大きい。選手たちにも、それを感じてほしい」。20歳前後の元気な学生たちを預かり、自らの経験を注入している。

 熱血漢である監督の薫陶を受け、バットでけん引するのが岩城だ。葉っぱを口にくわえた「ドカベン」の登場人物ほど破天荒なキャラクターではないものの、今月上旬の全日本大学選手権でインパクトのある活躍を見せた。1回戦の日本文理大戦は、3回無死満塁で走者一掃の二塁打、7回に左越え3ランで2安打6打点。単に打つだけではない。2回戦の四国学院大戦は1―1の9回1死満塁で相手投手のボークによりサヨナラ勝ち。この“珍決着”直前に敬遠で歩かされた岩城が球審に「セットが静止していない」と指摘していた。心はホットに、頭はクールに、チームを8強に導いた。

 岩城は福岡市出身で父や母方の親族がクラブチームをつくって活動するほどのソフトボール一家に育った。物心つく頃にはバットを握っていたという。香椎中では軟式野球。東海大五高(現東海大福岡)で甲子園出場経験はないものの、小さい頃から憧れたプロ野球を目指し「自分を試す」意味もあり九産大を選んだ。大所帯とはいえ「1年から試合に出られないようなら上にはいけない」と強い決意で取り組んだ。1年秋から一塁を守り、いきなり打率・432で首位打者に輝いた。その後も春秋リーグ戦で打率4割を超え「本番に強いタイプなんです」と断言する。たゆまぬ努力があるから結果も出る。部の練習が休みでも香椎中や東海大福岡高に顔を出し、体を動かす。体幹などを鍛える筋力トレーニングも欠かさない。動画でプロ野球ヤクルトの山田、ソフトバンクの内川など、お気に入り選手もチェック。常にレベルアップを目指す。

 全日本大学選手権が終わり、草場亮太ら一部を除いて4年生は引退。すでに新チームが始動した。就任16年目の大久保監督が当初から掲げた部訓3カ条の一つは「我々は、目標を全国優勝とする」。これを実現したのは05年の明治神宮大会だった。初戦の2回戦で近大に2―1でサヨナラ勝ち、準決勝は1―0で愛知学院大を破り、決勝は2―1で東北福祉大を倒すなど、1点差の接戦を制して栄冠をつかんだ。「選手のいい巡り合わせもあり、まとまりがいいチーム。神がかったような3試合でした。よく覚えています」と同監督。スコアはもちろんのこと、逆転シーンなど今でも詳細に語れるほどだ。その再現、いや、新たな栄光の歴史をつくる戦いはもう始まっている。

【“岩鬼”じゃない岩城が打線けん引、外野手でも“山田太郎”勝負強さで4番・脇坂】

打線を引っ張る3番岩城(左)と4番脇坂

 外野手ながら、九産大で“山田太郎”的な存在は脇坂龍次(2年=経営学部)だろう。大久保監督から「打率はそこまででもないけど、勝負強い。ここ一番での確率が高い」と評価される。1メートル77、86キロのがっちりした体形で貫禄十分だ。

 本人は4番を任され、プロ野球ソフトバンクの内川聖一を参考にした。「左右に打ち分ける。コースに逆らわずに、つなぐ意識を持ってます」。内川同様に常勝軍団を支える活躍を誓う。

【指揮官こだわりの捕手、「感性」で大役に光岡】

監督のお眼鏡にかなった光岡

 大久保監督は自身が務めていた捕手にこだわりを持つ。「投手を生かすも殺すもキャッチャー次第。毎年、苦労しますが、高いレベルを要求します」。大役を任せる際の主な評価ポイントは(1)感性(2)肩の強さ(3)キャッチングだ。なかでも相手打者の強み、弱みを見抜き、味方投手のいい面を引き出すための「感性」を最重要視する。

 今春、お眼鏡にかなったのは光岡龍志(2年=経営学部)だ。福岡県小郡市出身。のぞみが丘小1から、みくに野ハニーズで軟式野球を始めた当時から捕手一筋だ。入部当初は「多いと聞いていたけど、まさかこれほどとは…」と大所帯に戸惑った。筑陽高まで激しいレギュラー争いの経験はなかった。「ライバルが多いのは楽しみ。気を抜いたら、すぐに追い越されてしまう」。仲間と切磋琢磨(せっさたくま)できる喜びをかみしめ、精進している。「意識しているのは周りとのコミュニケーション。それと相手打者のデータに加え、気配を感じられるようにしたい」。監督の要求に応える理想の捕手を目指す。

【左腕の“里中智”だ 岩田救援で存在感】

今春好救援した左腕の岩田

 今春リーグ戦で岩田将貴投手(1年=経営学部)が救援で存在感を示した。大久保監督いわく「昔で言えば西武の永射です」。元プロ野球西武の永射保は“左殺し”の異名を取った左のワンポイントリリーフ。踏み込み足はインステップでタイミングをずらしつつ、角度をつけて投げ込む。左打者にとっては背中から球がくるように感じられた。

 リーグ優勝が懸かった最終節の九共大戦で岩田が登場すると、相手中軸の左打者たちはガックリした表情になったという。本人が憧れるのは巨人の森福允彦だ。「今も動画をチェックします。“魂の11球”ですね。かっこいい」。森福がソフトバンク時代の11年に中日と対戦した日本シリーズ第4戦。無死満塁から登板して小池、平田、谷繁を抑えた好救援だ。大久保監督には今秋から岩田を先発起用するプランもある。

【マネジャー4人がサポート 平川「人のために働きたい」】

大所帯を陰で支える平川(中央)らマネジャー

 九産大野球部は専用グラウンドを持つとはいえ、250人もいれば、なかなか同時に練習できない。部員は授業予定を提出し(1)9時半~(2)13時~(3)14時半~(4)16時半~(5)18時~の5班に分けられる。一つの班は40~50人で全員がしっかり練習できる態勢が整った。投内連係などレギュラーがそろわないとできない練習は土日や春夏の長期休暇期間に集中して鍛える。

 前記のスケジュール管理をはじめ、用具、練習試合の調整や遠征に伴う各種手続きなどマネジャー4人が迅速に対応する。その一人である平川稜(4年=国際文化学部)は長崎総合科学大付高で捕手だった。高3で椎間板ヘルニアと腰椎分離症のためプレーを断念。高校でマネジャーを務め「人のために働きたい」との思いを強くした。九産大では最初からマネジャーとして入部。プロ野球チームや大学の職員として引き続き野球に関わる仕事を模索している。

[ 2017年6月29日 ]

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