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九国大剣道部

 【全国大会出場へ 宮本武蔵の「万里一空」部訓に人間力高める】

 メーン!若き剣士が気合のこもった一撃を打ち込む。九州各県や山口の大学、高校の部活や注目選手を応援するスポニチキャンパス。今回は九州国際大剣道部の登場だ。男女主将を中心に全国大会出場を目指し、心身を鍛錬している。

九国大剣道部のメンバーは「万里一空」の部訓を掲げ日々精進

 裂帛(れっぱく)の気合、竹刀の打突音が道場内に響く。九国大剣道部は福岡県北九州市八幡東区の平野記念館(KIUドーム)2階にある武道場を拠点に活動している。昨春の21人に続き、今春も21人の新入生が加わり、部員は男女計60人の大所帯となる見込み。それに対応するため、試合場3面を確保して環境を整えた。

 剣道のルーツは日本古来の剣術にさかのぼる。江戸時代後期から広まった竹刀による実戦形式の稽古が次第に競技の形となったものの、純粋なスポーツとは一線を画す部分がある。全日本剣道連盟はHPなどで定義を次のように表明している。

 「剣道は、剣道具を着用し竹刀を用いて1対1で打突しあう運動競技種目とみられますが、稽古を続けることによって心身を鍛錬し人間形成を目指す“武道”です」

 九国大の北原敬蔵総監督(67、教士七段)は「気持ちの揺れがそのままストレートに出る競技。強くなるには心を磨かなければならない。剣道は礼に始まり、礼に終わる武道。社会に通用する人間をつくりたい」と信条を説明する。

 その薫陶を受けた部員は快活に剣の道を歩む。渡辺智大(ともひろ、4年=法学部)は下級生の支持を集め、昨年9月の新チーム始動から男子主将に就任した。「この競技の魅力は自分の力が全て、ということ。やってきたこと、やらなかったことが結果として自分に跳ね返ってくる。“結果にコミットする”ですよ」。某トレーニングジムのCMでなじみ深い言葉を引用し、笑顔で日々の鍛錬の重要性を説く。

 渡辺の北九州高時代の戦績は地区大会8強で県大会出場。輝かしい勲章がなくても大学進学して大好きな剣道を迷いなく選んだ。「一生続けられるし、礼儀作法も身につきます」。思わぬ実用性を明かした。現在、就職活動中で企業の担当者から“礼儀正しい”と褒められることがしばしば。検討している職業の一つが警察官で、ここでも武道経験はプラスに働くという。

 部の目標は10月に開催される全日本学生優勝大会(団体戦)出場だ。鹿屋体育大など強豪と争う全九州大会で上位進出しなければならない。下級生の有望株が戦力の中心になりつつあるものの、最終学年を迎えた渡辺も活躍を誓う。構えは上段で、得意技は出ばな面。相手が出てくるところを狙い、竹刀を振り下ろすスピード“太刀行きの速さ”で勝負する。競技に真剣に取り組み始めたのは、北九州市の守恒中から。幼い頃から競技になじむ選手が多いだけにキャリアが長いとは言えない。「連続技とか苦手なんです。技の引き出しは多くないけど、一発にかける戦い方なら。これだけは負けない」。オールラウンダーとして強くなるには相応の時間と経験が必要で、一つの技を極めるスペシャリストを目指した。かつて主将を務めた2学年上の福岡太一、1学年上の上田健人の2人を見習い、妥協を許さない姿勢で「主将の名を汚さないように」精進を続ける。

 道場内に掲げられた武訓は「万里一空」。戦国時代末期から江戸時代初期の剣豪・宮本武蔵が著した「五輪書」にある言葉だ。その解釈はさまざまあると言われる中で、北原総監督は「どこまで行っても世界の空は一つである。一つの目標に向かって努力せよ。目指す先は一つである」という意味に受け止め、部員たちに説く。単なる体力、技術の向上にとどまらず、二刀流を極めた剣豪のように心も練る。総合的な人間力を高めることを目指し、きょうも竹刀を振る。

男子主将の渡辺と女子主将の吉田

 ≪渡辺「主将の名を汚さぬように」精進、女子は“ど根性の人”吉田が引っ張る≫4月から新入生5人が加わり14人となる女子部員をまとめるのは吉田美咲(みさき、4年=法学部)だ。身長1メートル52と小柄ながら正眼(中段)の構えから面打ちを得意とする。15年5月の試合中に左足アキレス腱断裂の重傷を負った。素早く踏み込むために、左足はかかとを上げた状態から強く床を蹴る。ボクシングのハードパンチャーが拳を痛めてしまうように、蹴りが強すぎて過大な負荷がかかりケガにつながった。それでも「好きな剣道をやめるつもりはなかった」と笑う。懸命なリハビリで8月末頃に歩けるようになった。入院中から上半身や体幹のトレーニングにも着手。11月には練習復帰した。ど根性の人だ。北原総監督からも「吉田は、はっきりとモノを言うタイプ。私との稽古でも目の色を変えて向かってくる。おっとりした(男子主将の)渡辺とはいいコンビ」と信頼されている。

 篠崎中、北九州高と合わせて剣道歴は9年になる。「礼儀作法が身についていたんだと実感してます」。就職活動で企業の説明会やインターンシップに参加し、あいさつや返事を褒められるという。九国大剣道部の練習は2時間で集中して効率よく取り組む。春休み中の新4年生は午前に剣道、午後から就職活動、あるいはアルバイトというスケジュール。朝から体を動かせば生活リズムがよくなる。元気はつらつとした姿は企業の採用担当者にも好印象を与えそう。就活にも効く部活かもしれない!?

北原総監督(右)と森口コーチ

 ≪北原総監督 鹿屋体育大撃破誓う≫1962年創部で55年の歴史がある九州国際大剣道部を率いる北原敬蔵総監督(67)の剣道歴は半世紀を超える。北九州市の浜町小5から競技を始め、星陵中、若松高を経て国士舘大に進んだ。卒業後は北九州市の公立中学校に勤務。国体や全国教職員大会に出場10回を数える。指導者としても約30年前の石嶺中赴任時に全国大会出場。09年4月から九国大で指導にあたり11、15年と全国大会出場を果たした。父・利武さんが範士八段で「基礎、基本をしっかりやれ」と叩き込まれた。その基本とは「正しい面打ち」で、一足一刀の間合い(一歩踏み込めば打突でき、一歩退けば打突を外すことができる距離)に入れば、すぐに打て!というもの。父を含む先達から受けた教えを惜しみなく学生に注入。目標は同じ九州に君臨する全国レベルの強豪・鹿屋体育大だ。「うちにも伸びしろのある子たちが多い」とハッパをかける。

 総監督とともに指導にあたるのが森口泰成コーチ(26)だ。徳力小5から小倉尚武館で競技をはじめ、小倉日新館中で九州大会出場、常磐高で玉竜旗3位、九国大で11年に全国大会出場した。卒業した13年4月から同大職員となり、主に男子部員を受け持つ。「剣道に絶対はない。タイミングや駆け引きで勝負できる」と、その魅力を語り、後輩たちと強豪撃破を目指している。

【男子・石松、女子・中本がホープ】

ホープの期待がかかる石松(左)と中本

 ≪“三刀流”ゾロ 魅力感じて…≫男子の有望株・石松遥樹(はるき、2年=法学部)が憧れるのは、筑波大3年の14年に史上最年少21歳で全日本選手権優勝した竹ノ内佑也だ。「面をスパン!と打てるのが格好いい」。自身も得意は面打ちで「相手の体勢が下がったり、固まって居付いたところを迷わず打つ」ことを心がける。父・堪至さんに「水泳か剣道」を習い事として勧められ、先に見学した剣道に即決した。漫画「ワンピース」の登場人物“三刀流”のゾロに魅力を感じていた影響もあった。5歳から若松振武館で競技を始め、向洋中1年の少年玉竜旗では団体3位。若松高を経て九国大に進学。部の練習以外に帰宅後も素振りに励むなど精進している。

 ≪大会のたびに交流の輪≫女子のホープ、中本彩乃(あやの、2年=国際関係学部)が感じる剣道の魅力の一つは「友人がいっぱいできる」。福岡教育大付属小2年から桜丘スポーツ少年団で競技を始め、付属小倉中で九州大会出場、北九州市立高1年で九州大会8強。大会のたびに交流の輪を広げ、九州全県に友人がいるという。もう一つの魅力は「先生や先輩に教えてもらった技で勝てたら、うれしい」。毎日の努力が試合で実を結ぶことも無上の喜びだ。福岡県の有望選手を集めた合宿で知り合った鹿屋体育大の日高榛花(3年)が目標とする剣士の一人。「引き小手が凄くうまいんです」。自身も引き技が得意で参考に修行を続ける。

 ▽九州国際大学 1930年(昭5)に前身の「九州法学校」が開設。40年に「九州専門学校」、47年の戸畑地区移転に伴い「戸畑専門学校」、49年に「八幡専門学校」と名称を変え、50年に新制大学の「八幡大学」となる。89年に現名称となった。所在地の北九州市を中心とした地域、そしてアジアに開かれた大学を標ぼうする。学部は法、経済、国際関係の3つに続き、今年4月から新たに現代ビジネス学部を設ける。OBにプロ野球のダイエー、阪神などで活躍した下柳剛、プロレスラーの渕正信ら。

[ 2017年3月30日 ]

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