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福岡大スカッシュラケット部

 【汗だく 立体の攻防】

 スカッシュ!さわやか。清涼飲料水のキャッチコピーではありません。九州各県や山口の大学、高校の部活や注目選手を応援するスポニチキャンパス。今回は福岡大学スカッシュラケット部の登場だ。四方を壁に囲まれた屋内で目まぐるしい攻防を展開し、ホントにいい汗かいてます。

福岡大学スカッシュラケット部の山田監督(左端)と部員たち

 冬場でも、あっという間に汗がにじむ。シングルス用スカッシュコートの広さは62・4平方メートル平方メートルで、テニスコートのシングルス片面(約100平方メートル平方メートル)よりも狭い。四方を壁に囲まれた空間で目まぐるしくポジションを入れ替え、正面の壁から跳ね返るゴム製ボールを打ち合う。切り返しの動きが非常に多く、運動量はかなりのものだ。設備を保有するスポーツクラブなどでダイエット効果をうたうのも、うなずける。

 この競技に真剣に取り組む若者たちが福岡大にいる。スカッシュラケット部の「虎の穴」は第二記念会堂の南側、83年に完成した。同部創設はそれから約10年さかのぼる72年で、愛好会としてスタートした。翌73年の全日本学生連盟設立にも関わり、全日本選手権には第2回から出場するレジェンド校だ。

 学生スカッシュ界に強豪として君臨する順天堂大は、ジュニア世代から競技に親しむ経験豊富な選手を擁するという。福岡大は入学後に競技を始める選手ばかり。そんな状況でも佐々木雅(2年=工学部)は15年全日本学生選手権の新人戦で優勝した。「たまたまです」と謙遜するものの、精進のたまものだろう。

正面の壁にある赤いラインの間に打ち返す

 山口県下関市出身で市立東部中、豊浦高では軟式テニスに励んだ。新入生勧誘の試打会で、この競技にひかれた。「テンポが速いし、打った感じが気持ちよかった」。入部して本格的に始め、さらにのめり込んだ。「軟式テニスとはまったく別の競技という感じ。ラリーが続くし、仕掛けたり、仕掛けられたり。常に駆け引きがある」。悩みもある。一つは「洗濯が大変」。夏場は練習中にシャツを3回替えるほど大量に汗をかく。もう一つはラケットだ。壁際ぎりぎりの球を打ち返す際に、ぶつけて破損することがしばしば。1本約2万円の出費は学生にとって、かなり痛い。「壁際でも思い切り振れるように感覚をつかんでおかないと。そのための投資です」。練習や試合で臆せず振り続け、2年間で5本折ったという。

 憧れの選手はグレゴリー・ゴルティエ(フランス)だ。身長1メートル76、体重75キロの体格は世界トップクラスに入れば小柄。それでも卓越した技術で対戦相手をきりきり舞いさせ、15年にワールドオープン(シングルスの世界選手権に相当)で優勝した。「攻めも守りも、きれい。計算されたショットで主導権を握り、相手を動かす」。佐々木も身長1メートル69、体重65キロと小柄。ゴルティエの競技の醍醐味(だいごみ)を体現するプレーに魅了され、打ち方やフットワークを動画で何度も見て参考にする。

 年6回開催の部内ランキング戦で成績を残し、今春から複数いるキャプテンの1人となる。「みんな明るくて、スカッシュに一生懸命。この雰囲気がいい」。部の発展に尽力を誓う。全日本学生選手権団体戦が24日から横浜で開催される。福岡大男子はこの大会で15年に30年ぶりの優勝を飾り、16年も準優勝と奮闘した。今年は2年ぶりの頂点を目指す。

(左上)カーボン製ラケットは110~140グラム(右上)横の壁にもボールがはねた跡が(右下)横の壁も使い打ち返す(左下)ラケットのガットを自分で張り替える

 ≪300人超をまとめる“昭和のお父さん”山田監督≫愛好会としての草創期から中心的な役割を担ったのが山田悟監督だ。学生だった73年に初代キャプテンに就任。活動から離れた時期もあるが、05年に監督就任。ある部員から「昭和のお父さんというイメージ」と評される“頑固おやじキャラ”で男女計100人を超える部員をまとめる。文武両道を志す“山田ドクトリン”の一つは「部内恋愛禁止!」だ。

 「付き合っているのがわかれば、両方の家族に連絡します。“私が責任を持って仲人します”と伝え、もし結婚しなかったら詐欺で訴えます」

 冗談まじりながら、ここまで言い切るのは学生たちに充実したキャンパスライフを送ってほしいからこそだ。

 主将以外に複数のキャプテン、20人にも及ぶ副キャプテン職を設けて役割を分担させ「報告、連絡、相談」のホウレンソウを徹底。まるで会社組織のような形態で部を運営する。大所帯をスムーズに動かし、同時に教え子たちに社会人の基礎を叩き込む“愛情”だ。ほぼ一年中、スカッシュコートに顔を出し、選手とのあいさつでは必ず握手。スキンシップを大切に平成の若者たちと一致団結している。

 ≪「日焼けしたくない」「新しいことしたい」女子≫一昨年に団体優勝を飾った男子に負けじと女子も頂点を目指す。大崎香菜(3年=経済学部)は福岡市出身で那珂中で軟式テニス、筑紫中央高ではダンス部に所属した。大学でスカッシュを始めた理由の一つは屋内ラケット競技だからだ。「日焼けしたくない」。体育会の部活動で真剣に取り組みたいが、屋外は敬遠したいというニーズに当てはまった。「駆け引きで相手を出し抜いた時は快感」と競技のとりこだ。

 林照瑠美(2年=スポーツ科学部)は福岡県築上郡出身で椎田中、京都(みやこ)高ではバドミントンに励んだ。「新しいことをやりたい」と入部。最初はラケットの扱い方で戸惑った。中高6年間は手首のスナップを効かせて打っていた。スカッシュでは手首を固めて腕で振るイメージ。手首を返す癖が抜けず、バドミントンよりラケットが重いため「手首が痛かった」。速い展開や駆け引きという競技の醍醐味を堪能している。

 仲村美香(3年=スポーツ科学部)は福岡市出身で友泉中でバレーボール、福岡中央高で硬式テニスを経験。「どんどん新しいことをやりたい」。中学時代から憧れた先輩の影響もあり、この部を選んだ。「チャンスボールを逃さない。ガンガン攻める」というプレースタイルで最後まで諦めない。力を合わせて24日からの団体戦で躍進を狙う。

 ≪ボール弾まぬポイント「角」を狙え≫複数いるキャプテンの1人、松永善人樹(3年=経済学部)はボールをニック(壁面の角)に入れるのが「快感」だという。うまく角に入ればボールは弾まず、相手が打ち返せなくなる。福岡市出身で那珂川北中、筑紫高では軟式テニスをプレー。軟式テニスではラケットをボールにかぶせるように下向きにスイングする。スカッシュは平行、あるいは上向きで、野球でバットを振るイメージという。夕方5時からの全体練習以外にもコートに通い「粘って、しぶとく拾う」スタイルに磨きをかけている。

 ▽福岡大スカッシュラケット部 1972年に愛好会としてスタート。経済学部3年の学生だった山田悟監督が初代主将に。73年に慶応大、関西大、西南学院大と福岡大で全日本学生連盟を立ち上げ、全日本学生選手権を開催。78年に同好会となる。83年にスカッシュコート棟が完成。94年に体育会の部に昇格。2015年の全日本学生選手権団体戦で男子が優勝。

【「囚人」起源説】

 ◆スカッシュ 発祥は英国ロンドン。19世紀始め、囚人が運動不足解消のため壁に囲まれた空間でボールを打っていたのが起源とも言われる(諸説あり)。使用するボールがゴム製で握りつぶせる(squash=スカッシュ、押しつぶすの意)ことから、この名称になったという。英国のパブリックスクールなどを中心に広まり競技として発展。1966年に国際スカッシュ連盟(92年に世界スカッシュ連盟と改称)設立。アジア大会では98年バンコク大会から正式競技に採用。日本では27年に英国大使館内にコートが作られたのが始まりという。72年に第1回全日本選手権を開催。150を超える国や地域で親しまれ、世界の競技人口は1500万人以上。

 ◆スカッシュの主なルール 四方を壁で囲まれたコートで、1対1で直径4センチのゴム製ボールを交互に打ち合う。ラケットは長さ68・5センチ、重さ約110~200グラム。前面の壁の有効面に向かってボールを打ち、1バウンドかノーバウンドでラリーを続ける。サーブ権が移動するハンドアウト制またはラリーポイント制、5ゲームマッチ3ゲーム先取または3ゲームマッチ2ゲーム先取が基本ルール。体力だけでなく、洞察力や思考力も求められる。接触などから目を保護するため原則としてアイガードの着用が義務づけられている。

[ 2017年2月23日 ]

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