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五つ星 フリースタイルスキー 上村愛子/たくさんの弱さこそ「個性」

五つ星 フリースタイルスキー 上村愛子/たくさんの弱さこそ「個性」

異次元3Dで「愛子らしく」

笑顔で記者の質問に答える上村愛子
Photo By スポニチ

 フリースタイルスキー女子モーグル界のアイドルからエースへと成長したのが、来年2月のトリノ五輪代表に内定した上村愛子(25=北野建設)だ。98年長野五輪7位、02年ソルトレークシティー五輪6位とステップアップを果たし、3月20日のフィンランド世界選手権デュアルモーグルでは銅メダル。心身ともに最高潮で迎える3度目の五輪では「愛子らしく」を合言葉に表彰台を目指す。(倉地城)

若い時にメダル獲れなくてよかった

W杯猪苗代大会で公式練習に参加した上村愛子
Photo By スポニチ

 7年の歳月は上村を大人にした。自分自身の強さ、そして弱さを知った。18歳の女子高生だった長野。周囲の期待の大きさと、自らの実力のギャップに悩んだソルトレークシティー。いずれも表彰台には届かなかった。しかし、上村はきっぱりと言う。「若い時にメダルを獲れなくてよかった。選手として長くできたし、いろいろ分かるようになって3回目の五輪。トリノは本当に大事だなと思う。楽しかったこと、つらかったこと、全部が全部ひっくるめて今の自分があるし、五輪が身近に見えている」。視線の先には26歳で迎える大舞台がしっかりと映っている。

「猫のような」空中バランス

W杯猪苗代大会で豪快なエアを見せる上村愛子。今季自己最高の4位に入る
Photo By スポニチ

 強さ。昨シーズン、女子ではほどんど試されていないエアの大技「3D」を自分のものにした。体の軸を倒し込み、縦回転に横回転を加える。コルクをねじって抜くような動きをすることから「コークスクリュー」または「7O(セブン・オー)」と呼ばれる。W杯の表彰台に一度も立てず、スランプに陥っていた03年シーズンに男子の演技を見てヒントを得た。そのモデルは世界トップの実力者であるヤンネ・ラハテラ(31=フィンランド)とトビー・ドーソン(24=米国)。全日本の高野弥寸志ヘッドコーチ(43)が「(上村の動きは)猫のよう」と評した空中でのバランス感覚を生かし、失敗を繰り返しながらマスターした必殺技だ。

不振の中から生まれた大技

W杯ボス大会で優勝し、笑顔を見せる上村愛子
Photo By AP

 もともと、コザックなど前方を向いて飛ぶ技には自信を持っていたが、一昨年の3D解禁という大幅なルール改正により、難易度の高い技が求められることになった。極度の不振のため「愛子はもう終わりかな」と思うところまで落ち込んだことが、大技習得に挑む原動力となった。今では「これが決まれば高得点が出る。絶対にトリノでも使う」と自信を持って言える。必殺技があるからこそ、基本であるターンの技術を磨き、もう1つの技であるヘリコプターを進化させることも可能になった。

たくさんある弱さも「個性」

ソルトレークシティー五輪で期待されながらも6位に終わった上村愛子
Photo By スポニチ

 弱さ。トップアスリートとなった今でも「自分には弱いところがたくさんある」と話す。確かに、アテネ五輪競泳男子平泳ぎ2冠の北島康介のような有言実行タイプではない。「普通の選手が当たり前に言えることが言えない」。目標を問われても「“メダルいきます!”って言えないんです。いい滑りをしますって言うだけ」。しかし、自分の個性を否定はしない。思い浮かぶのは母・圭子さん(53)の「自分らしく生きなさい」というひと言だ。長野・白馬で娘の活躍を祈る母の存在は何よりも大きい。「どんな時でも100%私の味方でいてくれる。何があっても帰ってきていいよって」。帰るところがあるからこそ、競技にすべてをささげられる。「雪の上にいる時が一番自分らしい。応援してもらえる立場にいるし、これが上村愛子だって言える」と周囲への感謝の思いとともに滑る。

「多英さんは戻ってくる」

W杯第7戦猪苗代大会で3位に入った上村愛子と5位に終わった里谷多英(左)
Photo By 共同

 良きライバルの存在もその成長を後押しした。長野、ソルトレークシティーでメダルを獲ったのは上村ではなく、里谷多英だった。現在、里谷は不祥事により世界選手権代表を辞退し、秋以降のW杯などでトリノ五輪出場権獲得を目指す苦しい状況だが、上村は「多英さんは必ず戻ってくる人。尊敬しているし、負けないようにしたい」と話す。里谷は一昨年を休養に充てたが、上村はフル参戦してきた。「自分には4年間やっているという意地もある」と言う一方で「2人で表彰台に立てたら一番うれしい」という夢を思い描いている。

 地元・長野開催だった98年は「選手より1人の子供として出た」。前評判の高さとは対照的に「調子にアップダウンがあってやり方が分からなくなった」というソルトレークシティー。経験、実績、精神力とすべての面でレベルアップして迎えるトリノ五輪。「全然違う気持ちで臨める。私自身のバランスが取れている」と静かな闘志を燃やし、夢舞台へ向けて突っ走る。

見守りつづける最愛の母

ソルトレークシティー五輪の応援に駆けつけた母・圭子さん(左)と笑顔の上村愛子
Photo By スポニチ

 上村の一番の理解者である圭子さんは現在、長野・白馬にある北野建設の寮母として活躍している。海外遠征中の娘の成績を気にかけ、インターネットで国際スキー連盟の公式サイトにアクセス。夜中でも予選の成績から決勝の順位までをこまめにチェックする。大きな大会の前には往復3時間をかけて長野市の善光寺まで出向き、活躍を祈る。

 「前のシーズンは(不振で)初めて大変だったようですが、自分のやりたいことをやっているわけですから。今季はケガをしないで頑張ってくれました」と3大会連続の五輪出場を手中にした娘の活躍を喜んだ。

 上村は25歳とお年頃。本人が「ホワーンとしている人がいいです。普段は競技をやっているからかもしれないですが、落ち着ける人がいいかな」と恋愛観を明かしたことに、母は「私の希望はないんですが、包んでくれるような人と幸せになれればいいのでは」と温かく見守るつもりだ。

【レンズの向こう】ブランド品より地元の雑貨店!?

笑顔で記者の質問に答える上村愛子
Photo By スポニチ

 取材当日、大きなイヤリングとシンプルなネックレスを身につけていた上村。「いいセンスだなあ」と思い、どこで買い求めたか聞いてみた。遠征の多い生活。当然、海外のブランド品かと思ったが「地元(長野)の雑貨ショップ」だそうな。「ブランド品より自分が気に入ったものを使う」のが彼女流。入浴時や寝る時もつけていることが多いとか。飾り気のない性格と笑顔にとても好感を持ったが「本当は大切な人からのプレゼントじゃないの?」と考えてしまった。(写真部・井上徹)

上村愛子(うえむら・あいこ)

地球儀のトリノを指差す上村愛子
Photo By スポニチ

 1979年(昭54)12月9日、兵庫・伊丹市生まれ。長野・小県郡、白馬村と引っ越した後、4歳でスキーを始め、93年、白馬中2年でモーグルに転向。白馬高3年で長野五輪7位入賞。02年ソルトレークシティー五輪6位。W杯通算2勝。家族は母と兄。1メートル56、49キロ。

   

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