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【担当記者が見たリオ五輪・競泳】香生子の致命傷は心の浮き沈み

[ 2016年8月23日 09:35 ]

女子100m平泳ぎ準決勝に出場した渡部

 競泳女子平泳ぎで15年世界選手権200メートルを制した渡部香生子(JSS立石)が100メートル、200メートルともに準決勝で敗退した。

 この結果を受け、4年間指導してきた竹村コーチは「練習はうそをつかない」と落胆した。昨夏、世界女王となった19歳にはリオを通り越して東京に関する質問も及んだ。気の早い話題に耳をふさぎ報道陣を前にすると次第に笑顔は消えた。期待される声に耐えきれず、母・恵美子さんに「東京までやらないといけないの?」と涙で訴えたこともある。

 昨年の暮れには何度か無断で練習を切り上げ年明けまではメニューの3分の1程度しか消化できなかった。眠れない夜もあった竹村コーチは「信頼関係が崩れているのを感じた」という。春の五輪選考会後は高地合宿を敢行したが練習に背を向けた時間は簡単に取り戻せなかった。

 その一方、素顔は明るい早大生。父が体調を崩して仕事をしばらく休んだ時、母の誕生日プレゼントと一緒に生活費の入った封筒を渡す親孝行な一面もある。今回は致命傷となった心の浮き沈みだが、まだ19歳。いつしか自らの力で立ち上がり東京のゴール板に一番でタッチすることを楽しみにしている。(競泳・宗野周介)

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2016年8月23日のニュース