第１走者・山県　最高のスタートは「イメージ通り」

スタートを切る第１走者の山県

リオデジャネイロ五輪陸上・男子４００ｍリレー決勝

（8月19日）
　日本の第１走者は、山県の他には考えられない。日本代表の苅部短距離部長の言葉を聞けば、それは明らかだ。

　「全選手の中でトップクラスのスタート。１走としては世界一でしょう」。号砲と同時に２４歳が鋭く飛び出した。「僕がいいスタートを切れば勢いがつくし、他の国にもプレッシャーがかかる。それが自分の仕事と思って、持ち味を出せるようにした」。言葉通りの快走で、メダルロードを切り開いた。

　主戦場は１００メートル。コーナーからスタートする２００メートルに出場する機会は少ない。だからこそ、脳内で何度も描いた。好スタートを切るイメージを。「コーナーのスタートは少し特殊。そこのイメージをつくっておくことが大事」。１００メートルでは準決勝で自己ベストの１０秒０５をマーク。個人種目で得た確かな手応えをリレーに生かした。「決勝の一本は落ち着いてイメージ通りのレースができた」。リレーでは号砲への反応時間が予選も決勝も０秒１４４。安定感が抜群だった。

　１２年ロンドン五輪でも第１走者を務めた。４年前は４レーン。「ロンドンでは内側のコーナーのきつさで外側に振られてしまった。スピードに乗りにくいと感じた」。リオ五輪の決勝は５レーン。ややカーブは緩いが、油断はしない。「ロンドンの時みたいにならないように」。午前の練習から５レーンにスターティングブロックを置いてスタートを繰り返し、感覚を体に染みこませた。

　１つ外の６レーンにはメダルを争うアジアのライバル・中国。「外を見ながら走るといいコースで走れない。凄く内側に意識を絞って走った。最初、顔を上げたタイミングで（中国が）視界に入ったけど、そこからは飯塚さんと内側だけを意識していた」。１つ内側のジャマイカの息遣いを感じながら、飯塚めがけて突進。後は託した。山県は祈るような気持ちで、言葉にならない叫び声を上げた。