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伊調馨 女子初4連覇!「お母さん、やったよ」亡き母仰ぎ戦った五輪

<リオ五輪 レスリング> 4個目の金メダルにを手に笑顔の伊調

リオデジャネイロ五輪レスリング・フリースタイル女子58kg級
(8月17日 カリオカアリーナ)
 死んでも勝て!母はそういう人だった。4連覇の重圧があっても、残り時間がわずかでも、きっと勝てと言ったに違いない。その“声”が最後に伊調の背中を押した。

 「こんなにも天井を見上げた五輪はない。必ず上を向いて、母としゃべってから試合に臨んだ。最後もきっと母が助けてくれたんだと思う」

 金メダルを決めると、日の丸をたなびかせてもう一度天を仰いだ。伝えた気持ちはふがいない試合内容への「ごめんね」、そして「ありがとう」だった。

 試合前から言い知れぬ不安はあったという。「始まる前から戦うのが怖かった。4連覇の重圧ではないけど、いつもと違うなという感じだった」。百戦錬磨の女王の死角。4度目の五輪で「常にカツを入れてくれる人」という最愛の母はもうスタンドにはいなかった。

 14年11月、トシさんは青森県八戸市内の自宅で倒れ、脳挫傷のため65歳で亡くなった。母を亡くした直後は食事も喉を通らず、その思い出を染みこませるように、トシさんが使っていた実家のベッドで横になって一日を過ごした時もあったという。

 五輪イヤーを迎えたばかりの今年1月には、ロシアでの国際大会で13年ぶりに黒星を喫した。連勝は189でストップ。「あの負けは自分のレスリングを追求した結果」と割り切ってはいたが、負けたことのない選手ほど一つの負けは大きな意味を持つ。そこでの銀メダルは、毎日水を供えるトシさんの遺影の横に置いてある。

 伊調が「人生の師」と尊敬する八戸クラブの沢内和興会長(69)は、愛弟子の心のざわめきを感じ取っていた。五輪のたびにメッセージを添えて送る試合用の白ハンカチ。過去3回は「挑戦」「変幻自在」「全てを力に」。今回は「平常心」と書いた。「それが一番難しいし、それができれば金メダルだ」。初戦の前、伊調は胸にしまったハンカチに手を当ててからマットに上がった。

 初戦からどこか動きが硬く、決勝では崖っ縁まで追いつめられた。1―2とリードされたまま残り30秒に突入。タックルは不発に終わり、カウンターで右足に組みつかれた。しかし土壇場でも平常心は残していた。

 「ここしかない、ここを取ったら勝てる」。ピンチの中に勝機を見いだした。ラスト15秒でリードを許した想定練習を毎日繰り返してきた伊調だから見いだせた。腰の重さを生かして相手をつぶし、足を押さえつけ、必死に後ろに回り込む。逆転の2点。残り時間はわずか3秒になっていた。

 「どうだ!」

 スタンドの兄・寿行さんから母の遺影を手渡された。静かに涙を浮かべながら、伊調は母を優しく優しく抱きしめた。

 ▼伊調の189連勝 03年3月の国際大会でサラ・マクマン(米国)に敗戦した後から連勝がスタート。今年1月のヤリギン国際(ロシア)決勝でプレブドルジ(モンゴル)に敗れて連勝ストップ

 ▼五輪レスリングの男子連覇記録 3連覇が最高で4人が達成。男子グレコローマン120キロ級のカレリン(ロシア=96年当時)や今大会で達成した同種目同級のロペスヌネス(キューバ)がいる。

 ◆伊調 馨(いちょう・かおり)1984年(昭59)6月13日生まれ、青森県八戸市出身の32歳。中京女大付高(現至学館高)―中京女大(現至学館大)―ALSOK。兄、姉の影響で2歳から八戸クラブでレスリングを始める。高校2年時の01年、クイーンズ杯56キロ級で当時世界女王の山本聖子を破り注目される。五輪は04年アテネ大会から、北京、ロンドンと63キロ級で3連覇。姉・千春もアテネ、北京大会で48キロ級銀メダル。世界選手権は10度優勝。1メートル66。

[ 2016年8月19日 05:30 ]

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