×

【太田章の目】日本3階級制覇 諦めない気持ちが呼び込んだ3個の金メダル

[ 2016年8月18日 09:09 ]

金メダルを手に笑顔の(左から)土性、伊調、登坂

リオデジャネイロ五輪 レスリング女子

(8月17日)
 僕はレスリングの試合を見て泣いたことはないんだけど、伊調の4連覇の試合は泣いちゃいましたね。「(相手の手が)足から離れろ~」ってね。申し訳ないけど、技術的な解説は、3試合ともいらない。それほど、素晴らしい3個の金メダルだった。

 決勝の3試合とも終了間際の逆転だったのは、最初の48キロ級の登坂の影響もあったんじゃないかな。登坂は「攻めないまま負ける気か!」と思って見ていたけど、最後の最後にちゃんと攻めて終わった。強い相手とギリギリの試合をして勝った。あの勝ち方は、選手を熱くするんだよね。

 59キロ級の3位決定戦が逆転勝ちで、その後の決勝で、伊調は流れを見て狙っていった。相手が攻めてくれたのもあるけど、やっぱり、諦めなかったのが勝利につながったんじゃないかな。69キロ級の土性も落ち着いていた。2点差だけど、タックルを取れば勝てる。相手のスタミナを計算して、憎らしいほどの勝ち方だったよね。

 逆転勝ちは、最後まで諦めないとしか説明のしようがない。僕もソウル五輪の準決勝で、脇腹を痛めながら最後に逆転勝ちしたけど、あれは大差をつけられた後の一発逆転のフォール勝ち。負けるはずの試合で意外性の大逆転だよね。でも、この3人は1点差の勝負を勝ちきった。通がうなる試合だったね。

 女子は初日から3階級金メダルのスタートとなったけど、忘れちゃいけないのは、五輪で女子が採用される前から、誰にも見向きもされず、自腹で世界選手権に出場して、たくさんの金メダルを獲った選手がいたこと。五輪に出られない暗い時代を支えた選手の下積みがあって、今がある。日本女子レスリング界は、その人たちに感謝してほしいと、この3個の金メダルを見て感じたね。 (84年ロサンゼルス、88年ソウル五輪男子フリー90キロ級銀メダル、早大スポーツ科学部教授)

続きを表示

2016年8月18日のニュース