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「剛」に「柔」加わった大野 日本の大黒柱になる!

[ 2016年8月10日 07:45 ]

メダリスト会見を行った松本薫(左)と大野将平

リオデジャネイロ五輪・柔道男子73キロ級

(8月8日 カリオカアリーナ)
 【金野潤の目】試合を重ねるごとに大野の優勝を確信していく、そんな試合ぶりだった。まず、大きかったのは初戦を寝技で勝ったこと。大野は抜群の破壊力を誇る立ち技の選手というイメージだったが、この一戦でライバルに「今回は寝技も進化している」という印象を与えた。これで、組み手が大野に有利になっても、掛け逃げや防御姿勢で簡単には畳の上につぶれることができなくなった。

 準々決勝の「自制」も光った。相手はロンドン66キロ級王者という強敵。技ありでリードした後は無理をせず、試合をコントロールした。昨年の世界選手権では技ありでリードしながら一本を狙いにいき、技ありを返されたことがあった。精神的な成長だと思う。

 そして準決勝で見せた技の引き出し。32歳のバンティヘルトは大野の得意技である内股、大外刈りに対し腰を引く対策を練っていた。だが、その得意技に固執することなく巴投げ、いつもとは逆の一本背負い、という別の技でポイントを重ねた。この柔軟性も素晴らしかった。

 今後はさらにライバルたちに研究される対象となるだろうが、今回のような戦いぶりなら心配はいらない。体幹の強さを生かした従来の「剛」スタイルに、前述の「柔」の姿勢をプラスした大野は、20年東京五輪まで日本男子の大黒柱的存在になると思う。

 一方、女子の松本はたった一度の組み手ミスで散った。ドルジスレンとの準決勝、釣り手を持てないまま強烈な投げを食らった。準々決勝後の休憩が明け、ファーストコンタクト。魔が差した、とも言えるだろう。ただし勝手に体が動いた、という印象のロンドン五輪に対し、この日はしっかり相手の対策を行い、考えた試合運びが光った。気持ちを切らさず最後に銅メダルを確保した点も含め、4年間の成長は見せてくれたと思う。 (94、97年全日本選手権王者、日大男子監督、文理学部准教授)

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2016年8月10日のニュース