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松本 連覇ならず…銅にも「腹の中は煮えくりかえってます」

[ 2016年8月10日 05:30 ]

銅メダルを決めるも、浮かぬ表情の松本

リオデジャネイロ五輪・柔道女子57キロ級

(8月8日 カリオカアリーナ)
 柔道で日本女子4人目となる連覇に挑んだ女子57キロ級の松本薫(28=ベネシード)は、銅メダルに終わった。準決勝ではドルジスレン・スミヤ(25=モンゴル)に開始24秒、背負い投げで一本負け。3位決定戦では気持ちを切り替え、連珍羚(レンチンレイ)(28=台湾)から小内巻き込みで有効を奪って優勢勝ちした。日本女子は初日から3日連続の銅メダルとなった。

 メダルセレモニーを終えた松本は、首から下げた銅メダルを見て「甘酸っぱい」と笑った。悔しさとメダルを確保した安堵(あんど)感。「あー、終わった」と笑顔で包みながらも「腹の中は煮えくりかえってますよ」と本音も漏らした。

 「試合中は感じなかったが、その過程にはもちろんあった」。準決勝、相手の最初の背負い投げをこらえ「1回目が効かなかったので大丈夫と思ってしまった。試合中に“大丈夫”なんて絶対にないのに」。少し腰が高くなったところに、すぐ二の矢が飛んできた。4年前にはなかった連覇の重圧。それが野性の勘を鈍らせたのかもしれない。食うか食われるかの状況で、あってはならない「一瞬の気のゆるみ」。気付けば畳に転がされていた。

 ロンドン五輪では男女を通じて唯一となる金メダルを獲得した。“野獣”として注目され、ラーメンを食べに出かければツイッターにつぶやかれた。「ラーメンぐらい食べさせてよ!って最初は嫌でした」と戸惑いも大きく、慣れるには時間がかかった。

 13年には女子代表で暴力的指導問題が起こり、代表の環境も激変した。指導者が一新され、「自立と自律」をテーマに選手に委ねられる部分が圧倒的に増えた。そんなときも金メダリストの嗅覚は抜群だった。いくつもの選択肢を用意し選手に選ばせる時、代表の谷本歩実コーチは「選択力も選手の力」だという。コーチ陣はどれが正解か分かっている場合もある。「松本薫はそれを一発で選んでくる」。追い込む練習が必要と思えば追い込む、休む時は休む。しっかりと自分で判断できる能力があった。

 「ロンドン五輪の時は(前監督の)園田先生に引っ張ってもらってついていくだけだった。それで獲れた金メダル。今回は自分で考えて獲る金メダル」とリオ五輪の意義を語っていた松本。誰かに尻を叩かれたわけではない。自分の力で走り続けてきた4年間。「しんどかったあ」。4年間を振り返る言葉に実感がこもった。

 ◆松本 薫(まつもと・かおり)1987年(昭62)9月11日生まれ、石 川県金沢市出身の28歳。5歳から柔道を始め、兼六中―藤村女子高―金沢学院東高(転校)―帝京大、現在はベネシードに所属。2度目の出場となった10年世界選手権(東京)で初優勝。12年ロンドン五輪で金メダルを獲得。15年世界選手権(アスタナ)で女王に返り咲いた。1メートル62。右組み。得意技は足技、寝技。

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