×

内村、団体金への強い思い「ロンドンで金なら、引退していた」

[ 2016年8月10日 05:30 ]

金メダルを手に笑顔の(左から)山室、内村、田中、白井、加藤

リオデジャネイロ五輪体操・男子団体総合決勝

(8月8日 リオ五輪アリーナ)
 12年ぶりに、日はまた昇った。男子団体総合決勝が行われ、日本は合計274・094点をマークし、04年アテネ五輪以来、3大会ぶりに金メダルを獲得した。チームでただ1人、全6種目に出場した内村航平(27=コナミスポーツ)は、予選を1・100点上回る91・598点をマーク。団体は2大会連続銀メダルだったが、リオで悲願だった黄金の輝きを手に入れた。

 ずっと、この瞬間だけを待っていた。体操界の頂点に君臨しながら、内村のキャリアに唯一足りない五輪の団体金メダル。最終種目の床運動を終えチームメート、スタッフと肩を組んで結果を待った。同じ班で回ったロシアも予選1位の中国も、日本を上回れない。戴冠が確定すると、歓喜の輪の中心でキングが笑っていた。心の底から、笑っていた。

 「(金メダルは)めちゃめちゃ重たい。北京、ロンドンとメダルを獲ってきて一番重たい。僕らの頑張りというよく分からないものも入っているので、倍以上に重たく感じる」。

 五輪史上最も重い500グラムの勲章を首から下げた第一声は、「重てぇ~」だった。物理的な重量に団体への執念がプラスされ、さらに重みは増す。高校1年だった04年8月16日、アテネ五輪。冨田の鉄棒の着地が決まったシーンに心を奪われてから4375日。日の丸を見つめチームメートと「君が代」を熱唱したが、表彰台からの黄金の絶景が信じられなかった。

 「これが五輪の金メダルなのかって、みんなで言っていた。五輪の金メダルは個人でも獲ったけど、みんなで獲ると全然、違う。うれしいを超えちゃってる。(君が代は)さいっこーでしたね。声が裏返るまで歌おうと思っていた」。

 得点は持ち越さないが、予選はミスが相次いで4位に沈み、決勝の最終種目が鉄棒になるトップ通過はかなわず。あん馬から始まり、最後は鉄棒と床運動を連続して演技する過酷なローテーションになった。あん馬では1番手・内村の後に演技した山室が落下。誰もが思った。頂への道のりは険しい、と。だが、キングは諦めない。日本の強さを知っているから。

 「美しい体操は、僕たちにとって普通で当たり前。僕たちがやれば他の国の選手より、いい技のさばきができる。それにプラスアルファできる選手も増えてきた」。

 仲間を信じ、演技を見ることなく、ひたすら自らに集中。鬼気迫る表情で高得点を積み重ねた。鉄棒では予選で落下した屈伸コバチもきっちりつかみ、床運動へ。「試合前から床運動がしんどくなるのは分かっていた。だからアップも少なめにした」。床で務めた日本のアンカー。足がもつれそうになりながら、着地まできっちりまとめた。

 「ロンドンで団体も金メダルを獲っていたら、僕は引退していた」。

 団体への熱い思いが、この言葉に凝縮されている。20年東京五輪を見据える今は違うが、4年前の偽らざる本音だ。ロンドン五輪の個人総合を制した時点で、世界選手権を合わせた世界大会の連勝は前人未到の4に。継続中の大記録を自分で止めてしまってもいいほど、五輪の団体金メダルに恋い焦がれていた。

 予選1位、そして鉄棒でアテネの“栄光の架け橋”を超えるフィニッシュへ。描いていた青写真とは少し違った。「アテネはやっぱり超えられない」と笑う内村は、「でも」と続けた。

 「僕たちは新しい歴史をつくることができた。予選が1位通過じゃなくても、日本の体操は評価されるし、金メダルを獲れる絶対的なチームと証明できた」。

 アテネと比較することに、きっと意味なんてない。4年後の東京五輪、さらにその先につながる新黄金時代の到来。その事実は永遠に人々の記憶に残る、キングの存在とともに――。

≪内村のチームメイト評価≫
 白井は… やたらにひねりまくっている。ミスター・ツイスト、その通り。

 加藤は… 見ての通り、ブレないメンタル。絶対、失敗しない選手。絶対に。

 田中は… この中で一番、美しい演技、正確な技さばきができる選手。

 山室は… ムードメーカーとして盛り上げてくれる。ひと言で支える選手。

続きを表示

この記事のフォト

2016年8月10日のニュース