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右手小指完治せず…それでも木村沙織が五輪初戦に必要な理由

[ 2016年7月27日 13:40 ]

ブラジルへ向けて出発した木村沙織の右手小指には包帯が…

 リオデジャネイロ五輪に出場する日本代表選手たちが、続々と現地入りしている。4大会連続出場となるバレーボール女子日本代表は今月22日に羽田空港を出発し、現在はブラジル・サンパウロ州内で時差調整のための合宿を実施中。31日にリオデジャネイロ入りする予定だ。

 出発時、気になったのは、包帯が巻かれた木村沙織主将の右手小指の状態だ。5月の世界最終予選3戦目の韓国戦で負傷した。その後の予選4試合には出場したが、6月のワールドGPなどにはエントリーしなかった。ケガの詳細については明かされていないものの、症状はかなり重いと思われる。木村は「自分では気にしていないつもりだけれど、みんなが心配してくれる」と努めて明るい表情で話したが、真鍋政義監督は「少しずつ練習はしているけれど、今まで故障をしたことのない選手なので、不安材料です」と正直な気持ちを打ち明けた。

 日本の1次リーグ初戦は6日の韓国戦。指揮官は「初戦に間に合うかどうか」とも話していたが、木村はおそらく初戦のコートに立つと思う。4大会連続の五輪出場となる木村は今や攻撃だけでなく、守備の要でもある。主将として若手の多いチームのまとめ役も任されており、木村不在の戦力ダウンは以前にも増して大きくなっている。そして、五輪最終予選で負けている韓国は、勝って勢いをつけたいライバル国だ。さらにもう一つ、木村が初戦に必要な理由は日本が最も大事にする「団結」を生む可能性があるからだ。

 日本が28年ぶりに銅メダルを獲得した前回のロンドン五輪。実は日本の中心選手だったセッター竹下佳江は直前合宿で左手の人差し指を骨折していた。竹下は監督やスタッフにはその事実を伝えたものの、他の選手には隠した。試合にはテーピングでがっちり固定して出場し続けた。ただ、骨折という事実までは知らないまでも、負傷していることは他の選手にも伝わる。手負いの竹下が鬼気迫る表情でボールに飛びつき、トスを上げ続ければ、周りの選手たちは竹下の頑張りに応えようと、懸命にボールを追い、トスを打ち込んだ。竹下の負傷は結果的にチームの団結を生む一つの要素となった。そして、その団結から生じた粘り強い守りと、勝負強い攻撃が日本を銅メダルへと導いた。

 日本はロンドン五輪後の14年世界選手権7位、15年W杯5位で、世界的に見ればメダルの有力候補とは言えない。真鍋監督は「五輪は何が起こるかわからない。チームスポーツは団結することで、計り知れない力を発揮すると、前回の五輪で思いました」と言った。手負いの木村はチームに団結をもたらす可能性のある重要な切り札だと思う。 (柳田 博)

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2016年7月27日のニュース