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カレリン超えた!吉田V13で“霊長類最強”に

[ 2012年9月30日 06:00 ]

13大会連続世界一を達成した吉田は、公約通りNEWSの「チャンカパーナ」の振りを披露

レスリング女子世界選手権第2日

(9月28日 カナダ・ストラスコナカウンティ)
 吉田が前人未到の領域に突入した。55キロ級決勝で吉田沙保里(29=ALSOK)がヘレン・マルーリス(米国)にフォール勝ち。自身初の全試合フォール勝ちで大会10連覇を達成するとともに、五輪を合わせた世界大会の優勝回数を13とし“霊長類最強”と呼ばれたアレクサンドル・カレリン氏(ロシア=グレコ130キロ級)を超えるレスリング史上最多記録を樹立した。世界大会の連勝も「62」に伸ばし、カレリンの61を超える新記録。無敵の名をほしいままにする女王は、来年以降の記録更新と、16年リオデジャネイロ(ブラジル)での五輪4連覇にも意欲を見せた。

 マット上で大の字になった相手の前で、吉田は右手で何度もガッツポーズを取った。約束していた通り、ファンを公言するNEWSの「チャンカパーナ」のポーズ。そして、受け取った日の丸を背に、会場も一周した。10連覇と世界V13達成。笑顔の女王は「13回の優勝が世界一の記録で誇りに思う。カレリンを超えられたのは、素直にうれしい」と声を弾ませた。

 ロンドンの試合からちょうど50日目で「練習ができたのは15日から20日くらい」と自ら認めた練習不足。だが、不安は杞憂(きゆう)だった。初戦をわずか58秒のフォールで勝ち上がると、3回戦は第2ピリオド29秒でフォール。ハイライトは準決勝、今年の欧州女王シニシン(ウクライナ)戦だ。第1ピリオド終盤に「相手が場外に出たと思って気を抜いた」瞬間を切り返され3失点。先にピリオドを失った。

 04年アテネ五輪準決勝のゴミズ(フランス)戦以来となる大量失点でハートに火が付いた。第2ピリオド1―0で追いつくと、最終ピリオドは相手を浴びせ倒してフォール。「投げられたんでねえ」。決勝も第2ピリオド52秒で仕留めた。吉田を研究し続け、怖いものなしで挑んでくる相手を全員ねじ伏せ「相手が研究してきて、それを私が覚えるからまた、レベルが高くなる」と振り返る余裕すら見せた。

 20代最後の試合でレスリング界の金字塔を打ち立てたことで、心境の変化が起きた。ゆっくり決めたいとしていた今後について、吉田は「14、15は簡単ではないと思うけど、狙えるなら狙いたい」と話し、来年以降の世界選手権にも継続して出場し、16年リオへ向かう考えを明らかにした。その理由は「カレリンを超えても目標は自分でつくるもの。例えば、私が死ぬまで抜かれない記録」―。世界中がYOSHIDAの背中を追いかけて11年。人類未到の地平すら、吉田にとっては通過点にすぎなかった。

 ◆アレクサンドル・カレリン 1メートル93の巨体と圧倒的なパワーを生かし、男子グレコローマン130キロ級(当時)で88年ソウル、92年バルセロナ、96年アトランタと五輪3連覇、世界選手権は89年から9連覇したロシアのレスラー。重量級で難しいという、伏せた相手を持ち上げて投げるリフト技が得意で、「霊長類最強」の呼び名があった。87年から無敗を続けたが、レスリング初の4連覇を目指した00年シドニー五輪決勝でルーロン・ガードナー(米国)に敗れて現役を引退した。

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2012年9月30日のニュース