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湯元兄弟育てた世界一厳しい父「あいつなりには頑張った」

[ 2012年8月12日 06:00 ]

ロンドン五輪レスリング 男子フリー55キロ級3位決定戦

 スタンドで見守った父の鉄矢さんは、表彰台を誇らしげに眺めながらも、「あいつなりには頑張ったかな。メダルは最低限だったから」と厳しく言い放った。それでも、和歌山から駆けつけた26人の応援団に祝福されると「ホッとした」と目尻を下げた。

 世界で一番厳しい指導者は、自身にも過酷なノルマを課した。兄弟が大学に進学した場合には2人で約3000万円(授業料など)が必要だと知ると「父ちゃんは3000万円もないから、大学の欲しい選手(特待生)になれ」と叱咤(しった)。その一方で、自らも出稼ぎで資金捻出に奔走した。

 実家の和歌山を出て、半年ほど中国自動車道の作東インターチェンジ(岡山県美作市)の工事現場で働いた。その後も、徳島や大阪などを転々。「おまえらのために金つくってくるから、しっかりやれ!」とカバンを背負い出て行く後ろ姿に、兄弟が何も感じないわけはなかった。

 出稼ぎは2人が卒業するまで4年2カ月も続いた。「うちは金持ちのボンボンとは違うから」。タオルを巻き付けた角材で、兄弟の尻を叩き続けてきた父は「今まで厳しいことを言ってきたけど、きょうはお疲れさん、と言うしかないな。でも、兄貴の健一を超えてほしかったな」と笑った。

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2012年8月12日のニュース