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あと一歩届かなかったメダル…愛子“やめられない”

[ 2010年2月15日 06:00 ]

女子モーグルで優勝した米国のハナ・カーニー(手前)と3位のシャノン・バークを見つめる4位の上村

 悲願のメダルが雨中に消え、また涙がほおを伝った――。モーグル女子が13日、サイプレスマウンテンで行われ、日本勢メダル1号の期待がかかった上村愛子(30=北野建設)は決勝で小さなミスが出て24・68点の4位。4大会連続入賞は冬季五輪の日本女子選手として史上初の快挙だが、4度目の五輪でも表彰台に立てなかった。五輪初出場の村田愛里咲(19=北翔大)が8位入賞と健闘。98年長野五輪金メダリストの里谷多英(33=フジテレビ)は19位に終わり、引退が濃厚となった。

 レースを終えて激しさを増した雨が、上村のほおで涙と交じった。「しようがないと言ったら変なんですけど、自分はやっぱりメダルになかなか届きにくい感じだったんだな、というのを素直に受け止めて…そのあとですかねえ、自分のことを支えてくれている人とか…本当になんて言うか」と吐き出すと、あふれる涙を、左手でぬぐった。
 霧がコースを覆い、雨は横殴りに降り続いた。悪天候での実施が決まっても、スタンドの母・圭子さん(58)を探す余裕もあった。予選は「ちょっと安全に行きすぎて」5位通過だったが、課題の第1エアのヘリコプターを完ぺきに決め、手応えがあった。迎えた決勝。湿った雪を「攻めやすい」と好む上村にとって、不安はなかった。
 だが、スピードが出ない。雨で重くなった雪で出場27選手中2番目に軽い49キロの体が前に進まない。第2エアの着地もわずかに乱れ4人を残して2位。「みんなが失敗しちゃうとか願うのは良くないなと思っていたから、彼女たちがなぜ(自分より)上にいるのか見て納得したかった」と見守った30歳は、最後の最後にトップ3から消えた。
 07~08年シーズンに日本人初のW杯総合優勝を飾り、昨年3月の猪苗代世界選手権ではモーグルとデュアルモーグルで2冠。五輪では初出場の98年長野五輪の7位以来、1つずつ順位を上げて4大会連続入賞の快挙を達成したが、悲願のメダルにはまた届かなかった。
 前夜は国内調整中のアルペン男子代表・皆川賢太郎(32=竹村総合設備)に電話。「自分の滑りとかターンとかを信じれば大丈夫」と声を掛けられたという。「メダルは獲れなかったけど(初出場の)長野以来、本当に気持ちよく滑れたっていう試合だった。私が全力で頑張ったというのは見てくれたと思うし、賢太郎さんもガツンっとやっちゃってくださいって」と話したときだけは、妻の笑顔も浮かんだ。
 中学2年生のとき、旅行したウィスラーでモーグルに出合った上村にとって、バンクーバーは運命の地だった。「ここでいい滑りをするのが、自分のモーグル人生のすべてだと考えてやってきた。ここでメダルを獲れればやめたかもしんない、ってくらい」。今後については「時間がたってゆっくりと考えようと思う」と含みを持たせた。だが「雪のない生活は考えられない」とも漏らす。長期休養後に“皆川愛子”として現役復帰する計画もあるという。27日(日本時間28日)に登場する皆川の応援に回り、ともに帰国するのは来月2日。どんな決断をしても、4大会連続入賞の金字塔と、その笑顔が色あせることはない。

 <連続入賞は4大会が最多>冬季五輪での日本選手の連続入賞は4大会が最多。ジャンプの原田雅彦は92年アルベールビル大会から02年ソルトレークシティー大会まで計6回入賞し、計3個のメダルを獲得した。ノルディック複合の荻原健司もアルベールビル大会から4大会連続で入賞し、団体で金2個。ショートトラックの寺尾悟もメダルはないものの4大会連続入賞している。女子はスピードスケートの橋本聖子と岡崎朋美が3大会連続で上村に続く。

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2010年2月15日のニュース