G1周年記念競走展望

【平山智加】紅一点 大輪咲かす

[ 2013年4月9日 06:00 ]

出場52選手の中、唯一女子選手で出場する平山智加
Photo By 提供写真

 春らんまんの大村湾に浮かぶ一輪の紅い花。出場52選手の強豪の中、ただ1人の女子選手が平山智加である。「花を添える」の形容句では語りつくすことは出来ない。何しろ彼女、今年1月に得た大きな勲章を手にやって来るのだ。尼崎の60周年記念で今村豊、浜野谷憲吾、岡崎恭裕らSG覇者を相手に金的を射止めている。男女混合のG1レース制覇にページを戻すと、99年の四国地区選手権を制した山川美由紀以来14年ぶりの快挙となった。うっすらと流れる涙が頬を伝い「周りの人たちのおかげです」と感謝の言葉を口にした。

 誰よりも心の支えとなったのは言うまでもない、夫の福田雅一だ。同県の先輩である福田は江戸川周年の他に四国地区選手権2回の優勝と合わせG1で3回の優勝を飾っている強豪選手。つまり同じ世界に身を置くおしどりレーサーだ。「主人が副支部長もやっているし、お互いのレース開催の日程などで一緒に過ごす時間は少ないんですよ。映画やカラオケにも行きたいんですが…」この時ばかりはちょっぴりさびしそうな面持ちだ。「でもプロペラのことや、情報交換が出来るし、励みともなってます」絆の深さもうかがえる。
 ベストカップルが今回の大村で同時参戦。夫婦対決も焦点のひとつだ。「四国地区以外では昨年3月の若松MB大賞以来でしょうね。最終日に対戦がありました。通算ですか?もう10回くらい対戦したと思うけど、勝ち負けは五分五分、いや主人の勝ち越しじゃないですか」と直接対決を振り返る。

 デビュー2年目の丸亀で初優勝と早咲きの平山、10年の丸亀女子リーグでは11戦全勝の完全Vもやってのけた。いつも柔和な笑顔を絶やさないが、カポックを身にまとい、ヘルメットをかぶると一躍“ジャンヌダルク”と変身し、一流の男子選手相手に一歩も引かないコーナーワークを披露する。

 11年の夏。母校の英明高校野球部は創部6年で香川県の代表として甲子園に出場している。平山は高校時代にバスケットボール部で青春の汗を流し国体やインターハイでも活躍した。矢のごとく、ツバメのように素早い反射神経はその時に培われたものかもしれない。

 昨年の大村で開催した第1回賞金女王決定戦にも出場。しかし、トライアルの1走目に失格の憂き目を味わっている。「あのレースは反省しか残っていません。でも今度もまた呼んでもらって感謝しています」と前を向く。バスケットボールにたとえるなら豪快にして緻密なダンクシュート。平山はかれんでしなやか、なおかつ強靱(きょうじん)さも兼ね備える大きな花をまたひとつ咲かせようとしている。

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