藤井正弘の血統トピック

【天皇賞・春】世界一の“高速ステイヤー”決戦

[ 2015年4月29日 05:30 ]

 春の天皇賞は3月にIFHA(国際競馬統括機関連盟)から発表された最新のG1ランキングにおいて、2701メートル以上の距離カテゴリーで世界のトップにランクされている。これは、過去3年の上位4着までに入線した馬のレーティングの平均値が最も高かった(117・67ポイント)ということ。おそらく競走条件が変更されない限り、来年以降も“世界一”の座は不動だろう。

 そもそも歴代最強クラスの3冠馬がレコードホルダーである3000メートル超級のG1など、世界のどこにも存在しない。異論もあるだろうが、結果的に“高速ステイヤー”という二律背反が成立していることこそ日本の競馬の独自性であり、それゆえに日本産馬の血統はユニークな形で発展したとも言えるように思う。ちなみに今年の出走予定馬18頭は、全て父馬が日本産である。

 キズナは9年前に3分13秒4の大レコードを叩き出した父ディープインパクトとの“2代制覇”に再び挑む。いとこにあたる94年の優勝馬ビワハヤヒデ、その半弟である96年の2着馬ナリタブライアンは、どちらも超長距離部門でも一流だった。長姉ファレノプシスの古馬G1初制覇は5歳秋のエリザベス女王杯。昨年の敗因は距離ではなく、経験値の差とも解釈できる。同じことは同族(いとこの子)のラストインパクトにもいえる。阪神大賞典で長距離適性を実証したデニムアンドルビーを含め、レコード更新もあり得る高速馬場ならば、競走馬としての父の“実績”を重視したい。

 3連覇が懸かるフェノーメノは、母のディラローシェが穴血脈としても定評のあるリボーの4×4。その影響か、ここ一番ですさまじい集中力を発揮する一方で、気性的にピークが長続きしない面もある。前哨戦はガス抜きと割り切るべきかもしれない。同じステイゴールド産駒のゴールドシップは、母の父メジロマックイーンを超える阪神大賞典3連覇で健在ぶりを証明した。父も母の父も、ある意味で引退するまで底を見せなかった馬。鬼門の京都コース攻略も血統的な可能性は残されている。

 フェイムゲームは母のホールオブフェームがステイゴールドのいとこで、祖母のベルベットサッシュがサッカーボーイの全妹。2頭の“春天サイヤー”を擁する母系のスタミナ含有量は、今回の出走メンバー中随一といえる。アドマイヤデウスは祖母のアドマイヤラピスが3000メートルのオープン特別勝ち馬。ダート王としてのイメージが強い父アドマイヤドンだが、菊花賞でも0秒5差4着に入線したように、距離延長が足かせになる血統ではない。(サラブレッド血統センター)

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