藤井正弘の血統トピック

牡牝3冠目 無風では終わらない

[ 2014年10月15日 05:30 ]

 今年はオークス馬ヌーヴォレコルトもダービー馬ワンアンドオンリーも順調に夏を越し、それぞれ秋初戦を快勝した。常識的に考えれば牡牝共に3冠目は無風状態なのだが、実は血統データ的に少々引っ掛かる部分がないこともない。

 ヌーヴォレコルトとワンアンドオンリーは同じハーツクライ産駒だった。今年のように牡牝の2冠目を同じ種牡馬の産駒が制したのは、グレード制導入以降では93年(トニービン)、94年(ブライアンズタイム)、95年(サンデーサイレンス)、01年(トニービン)、03年(サンデーサイレンス)、12年(ディープインパクト)の計7回。これが種牡馬ハーツクライのチャンピオンサイヤー級のポテンシャルの証明であることは以前にも書いた。

 では、その年の第3冠はどうだったかというと、旧エリザベス女王杯を含め、少なくとも牡牝のどちらかは別の種牡馬の産駒が優勝しているのである。“東京2冠”を独占するほどの強力な遺伝力を示した世代だからこそ、レースの質が異なる最後の1冠を勝ち切れないという面はあるのかもしれない。ちなみに前記7年、計14頭のオークス馬とダービー馬のうち、3冠最終戦を制したのは94年のナリタブライアン、03年のスティルインラブ、12年のジェンティルドンナ。いずれも“3冠馬”だった。

 現役時代のハーツクライはダービー2着で一線級に躍り出たものの、秋初戦の神戸新聞杯で3着に終わり、菊花賞では1番人気に反して7着に敗れた。3歳秋は古馬戦線での飛躍に向けての準備期間だったともいえるだろう。種牡馬としても初年度産駒はキョウワジャンヌが秋華賞2着、ウインバリアシオンが菊花賞2着と気を吐いたが、過去2世代は3冠最終戦とは無縁だった。ローズSで力の違いを見せつけたヌーヴォレコルトにしても、成長曲線的にはそろそろひと休みの時期。付け入る隙は残されている。 (サラブレッド血統センター)

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