藤井正弘の血統トピック

ジャスタに潜む非主流ならではの反発力

[ 2014年9月24日 05:30 ]

 今年の凱旋門賞に参戦する日本馬は世界ランキング(9月7日現在)総合トップのジェスタウェイ、2400メートル部門の2位タイで凱旋門賞出走予定馬ではトップタイのゴールドシップ、そしてそのゴールドシップを前哨戦の札幌記念で退けたハープスター。レーティングの上では上位独占も可能ということになる。

 ちなみにジャスタウェイのレート130ポンドはM(マイル)コラムで獲得した数値。仮にマイルと2400メートル部門の“2階級制覇”に成功すれば、レーティングによる世界ランキングが整備されて以来、初めての快挙となる。ロンシャン克服の血統的なよりどころは、父のブルードメアサイヤーである第67回(1988年)の凱旋門賞馬トニービンに尽きるのだが、第1回BCクラシックを大穴で制した母の父ワイルドアゲインをはじめ、母系に蓄積された北米アウトサイダー血脈には非主流ならではの反発力が潜む。休み明け、ダービー以来の2400メートル戦という逆境でこそ余力の搾り出しがあるのかもしれない。

 地元フランス勢を軸とした“欧州連合”の中で血統的に警戒すべきはエクト。凱旋門賞コースのニエル賞を制した地元フランスの3歳牡馬である。エクトの父ハリケーンランは第84回(2005年)の優勝馬で、その父モンジューは第78回(1999年)の優勝馬。史上7回しか記録されていない“父子制覇”を達成した極めつきの凱旋門賞父系だが、それ以上に不気味なのは、このサイヤーラインに継承された日本馬キラーの属性だ。

 前記99年の凱旋門賞でモンジューに惜敗したのがエルコンドルパサー。昨年、オルフェーヴルの夢を砕いたトレヴはモンジューの後継種牡馬モティヴェイターの産駒だった。一方、息子のハリケーンランが勝った凱旋門賞には日本馬の参戦はなかったが、ハリケーンランは翌06年のキングジョージ6世&クイーンエリザベスSで日本馬の挑戦を退け優勝している。そのレースで3着に終わった日本馬がハーツクライ。言うまでもなくジャスタウェイの父である。

 エクトは種牡馬ハリケーンランが4世代目にして初めて送り出したG1ウイナーでもある。まるでハーツクライ産駒をピンポイントで迎撃するために生まれてきたような最強の刺客。対ジャスタウェイという観点から、これほど怖い馬はいない。(サラブレッド血統センター)

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