藤井正弘の血統トピック

エピファの“影武者”ユールシンギング

[ 2013年10月16日 06:00 ]

 今年の菊花賞は春の2冠の優勝馬不在で争われる。3冠どころか2冠も懸からない菊花賞は過去10年で04、08、10年の3回。優勝馬は順にデルタブルース、オウケンブルースリ、ビッグウィークで、この3頭は全て皐月賞にもダービーにも出走していなかった。今回も大本命エピファネイアを負かすとすれば、G1初出走の新興勢力ということになる。

 中でも血統面から注目すべきはセントライト記念勝ちのユールシンギングだろう。父シンボリクリスエス、母の父スペシャルウィーク。血統表の4分の3までが共通するエピファネイアの“血統的影武者”ともいえる上がり馬である。

 血統登録を受けた3歳世代のシンボリクリスエス産駒は計146頭。うち3分1の49頭まではサンデーサイレンス牝馬の子に占められている。以下、母の父別の頭数ではフジキセキ(11頭)、アドマイヤベガ(6頭)と続き、「母の父スペシャルウィーク」は4番目の4頭に過ぎない。にもかかわらず2頭のG2ウイナーが出たのだから、これはちょうど2年前、オルフェーヴルとフェイトフルウォーによる東西の菊花賞トライアル独占で話題となった「ステイゴールド×メジロマックイーン」の黄金配合級ニックスと考えられる。

 ちなみにユールシンギングの2勝目となった9月1日の500万条件戦で2着に入線したダイアゴナルクロスも同じ「シンボリクリスエス×スペシャルウィーク」の3歳馬。残る1頭キネオハレーも新馬3着の素質馬で移籍先の川崎では早晩勝ち上がるはずだ。

 ノーザンテースト産駒初のクラシック(82年オークス)馬である4代母シャダイアイバーにリアルシャダイ、トニービンと、ユールシンギングの母系には社台ブランドの歴代チャンピオンサイヤーの血脈が凝縮されている。付け加えるなら、3代母の父リアルシャダイは、セントライト記念連対馬として最後の菊花賞馬ライスシャワー(92年)の父。90年代に猛威を振るった菊花賞御用達サイヤーである。本番では“影武者”の方が脚光を浴びるシーンまで想定しておきたい。(サラブレッド血統センター)

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