藤井正弘の血統トピック

“距離短縮激走”は同じ父のツルマルボーイで実証済み

[ 2013年5月29日 06:00 ]

 例年、安田記念というと基本的に初顔合わせとなる香港勢の戦力分析が最優先のテーマなのだが、今回は国内組にも“異分子”がズラリ。絶えて久しい“2階級制覇”に挑む短距離王ロードカナロア、世界一層の厚い中~長距離部門から1階級下げて悲願のタイトルを狙うダークシャドウとショウナンマイティ…いずれもレーティング的には専門職のG1マイラーをしのぐ大物である。

 中でもトップレート(121ポンド)の評価を得ているダークシャドウのコンバートは、血統的にも大いに成算がある。父のダンスインザダークは96年の菊花賞馬。03年ザッツザプレンティ、04年デルタブルース、09年スリーロールスと、計3度の“2代制覇”を果たした最強の菊花賞サイヤーだが、その一方で種牡馬ダンスインザダークには安田記念の穴血統という裏の顔がある。04年に6番人気で優勝したツルマルボーイ、07年に9番人気で3着のジョリーダンスはこの父の産駒。付け加えるなら前者は天皇賞・秋→ジャパンC→有馬記念→大阪杯という臨戦ステップも今回のダークシャドウと全く同じだった。距離短縮のショック療法が効果的な血統でもあるのだろう。

 母のマチカネハツシマダは新潟芝1400メートルの五泉特別を含め、全3勝を1400メートル以下の距離で挙げた馬で、ダンチヒ直子の祖母ユーゼフィアは英G1ジュライCなどGレース4勝の名スプリンター、グリーンデザートの全妹。ちなみにグリーンデザートは98年の2着馬オリエンタルエクスプレスの父として、安田記念とダンチヒ血脈の特異な相性を最初に知らしめた馬でもある。デビュー以来、初めて1800メートル未満のレースを走ることになるダークシャドウだが、血統的には決して窮余の一手ではないのである。
(サラブレッド血統センター)

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