藤井正弘の血統トピック

ニジンスキー以来を止めたニジンスキー子孫

[ 2012年9月19日 06:00 ]

 国内外の大物が順調なリスタートを見せた3連休で、蚊帳の外となってしまった英セントレジャーのキャメロット。正直なところ42年ぶりの3冠は単なる通過儀礼と踏んでいたのだが、これが世界最古のクラシックの独自性であり存在意義なのだろう。近代競馬の異空間と言える3000メートル級では、脚力以上に道中のストレスへの耐性が重要な資質となる。残念ながら今回は人馬共にその資質が足りなかった。そしてまた残念ながらこの先、セントレジャーを走る2冠馬を見る機会は半永久的にないだろう。

 セントレジャーがG1格を維持できているのは、職人的ステイヤーにとどまらず、遅れてきた大物のジャンピングボードとして機能しているからでもある。恐らく最後の3冠ストッパーとしてもその名を歴史に残すことになる第236代優勝馬エンケの場合、血統的に後者のパターンである可能性も少なからずある。

 エンケは母シャワンダが05年に愛オークスと仏G1ヴェルメイユ賞を制した名牝で、その半姉シャワラの子、つまりエンケにとってのいとこには昨年の凱旋門賞2着馬でフォワ賞当日のヴェルメイユ賞を圧勝したシャレータがいる。大種牡馬キングマンボの残り少ない直子(3歳世代は12頭、最終世代の2歳は1頭のみ)であることも含め、極めてアクティブな血統なのである。それにしても3代母シャムサナの父が“最後の3冠馬”ニジンスキーだったのは、何とも奇妙な巡り合わせというほかはない。

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