藤井正弘の血統トピック

ワープの強さは“男喪失”にあった

[ 2012年9月5日 06:00 ]

 今年のサマー2000シリーズは、第2戦の函館記念、最終戦の新潟記念を制したトランスワープがトータル20ポイントで総合優勝を果たした。函館記念は展開がはまった印象もあったが、斤量2キロ増の新潟記念で発揮した上がり32秒3の決め脚は本物。7歳にしての本格化を認めるべきだろう。

 トランスワープの父ファルブラヴは10年のワンカラット、11年のエーシンヴァーゴウと、前2年連続でサマースプリントシリーズのポイントリーダーを送り出していた夏競馬のVIPサイヤー。札幌のクイーンSで古馬を一蹴したアイムユアーズ、今週のセプテンバーSで巻き返しを図るダンスファンタジアもこの父の産駒で、牝駒に上級馬が偏る種牡馬としても知られている。逆の見方をすれば牡馬が不振ということ。現3歳までの国産4世代(05年は海外供用)で古馬オープンにランクされた“牡馬”は1頭もいない。トランスワープの躍進の契機となったのも、5歳から6歳夏にかけての長期休養中に施された去勢手術。牝ではなくても、授精能力を喪失すれば能力全開に至るということなのかもしれない。

 ちなみに現在のところ、日本で生産された最も新しいセン馬のG1ウイナー、トウカイポイント(02年マイルCS)は、母ボンヌシャンスの全姉マッチポイントの子。つまりトランスワープとは限りなく兄弟に近い、いとこの間柄になる。父だけでなく、母系の方も去勢が極めて有効な血統だったようである。

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