藤井正弘の血統トピック

【日本ダービー(2)】エースに宿る「世界的ダービー仕様」

[ 2012年5月23日 06:00 ]

 負けてなお強し、という表現の取り扱いの難しさは、ほんの1カ月前に身に染みたばかりなのだが、ワールドエースの皐月賞には、やはりこの決まり文句がぴたりとフィットする。過去のデータからは絶望的な「2馬身半差」も落馬寸前のつまずき+終始大外のコースロスで圧縮可能。あとは2Fの距離延長を味方につけられるか否かが逆襲の鍵ということになる。血統的には2400メートル向きと断言していい。

 その根拠は母マンデラ(独オークス3着)の父アカテナンゴに求められる。85年の独ダービーでその父ズルムーに続く2代制覇を果たした同馬は、種牡馬としてもランド(93年)、ボルジア(97年)、ニカロン(05年)と、3頭の独ダービー馬を出したドイツの国宝級名馬。世界的に見ても最上級の「ダービー血脈」である。前記ランドは95年のジャパンCに優勝しており、東京2400メートルへのコース適性も実証済みだ。

 母マンデラの半弟には、欧州でG13勝を含むGレース8勝を挙げ、07年の世界ランキングでトップレート(131ポンド)を獲得した近年屈指の強豪マンデュロがいる。同馬が本格化したのは5歳時だった。ワールドエースの場合も叔父同様、ピークを迎えるまでにはある程度の助走期間を必要とするタイプ。皐月賞の敗戦はダービー制覇に向けての重要な布石だったという見方もできるだろう。

 皐月賞3着のディープブリランテは母の父ルウソヴァージュがマイラー寄りの中距離馬で、行きたがる気性はその辺りに由来するものと思われる。祖母のバブルドリームは菊花賞優勝、ジャパンC2着、ダービー3着のザッツザプレンティの半姉。その父アカラッド経由で父ディープインパクトのスタミナ源となったバステッドが増幅(4×5)されており、配合的にも距離克服の可能性は潜在する。活路は肉を切らせて骨を断つ大逃げ戦法にあるのではないか。(サラブレッド血統センター)

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