【有馬記念】エフフォーリア新王者!世代最強証明、G1・3勝目 横山武は史上2組目父子制覇
世代交代、新王者誕生だ。21年の中央競馬総決算「第66回有馬記念」が26日、中山競馬場で行われ、1番人気に支持されたファン投票1位のエフフォーリア(牡3=鹿戸)が天皇賞・秋に続く連勝でG1・3勝目を挙げた。22日に23歳の誕生日を迎えたばかりの横山武史は同レース歴代4位の年少優勝記録。96年にサクラローレルで制した父・典弘に続く2例目の父子制覇もやってのけた。グランプリ4連覇の偉業に挑戦した2番人気クロノジェネシス(牝5=斉藤崇)は3着。引退式でファンに別れを告げた。
残り200メートル。光輝く鹿毛に映える黒のシャドーロールが馬場中央から抜け出してきた。「何とか勝ってくれ!!」。横山武が相棒エフフォーリアをがむしゃらに鼓舞する。追いすがるのは今秋、日本を代表して海を渡った2頭。内からディープボンド、外クロノジェネシス。世代を超えた最強を決める叩き合い。抜かせない。日本一のゴールに飛び込んだ人馬を6140人の観衆が万雷の拍手で祝福した。
レース序盤は想定外の形となった。道中は中団の位置取り。「もう少し前で運ぶつもりだったが、思ったより行く馬が多かった」(横山武)。即座にプラン変更。最大の敵クロノをマークしながら体力を温存した。距離延長で不安視された折り合いも抜群。「賢い馬。心配する必要はなかった」。内が伸びる馬場でも外に持ち出したのは信頼の証。メンバーで唯一、デビューから乗り替わりがなかった人馬。あうんの呼吸で古馬をねじ伏せた。
歓喜のウイニングラン。「父(典弘)と同じでうれしいとはっちゃける性格」という横山武だが、この日はいつもの笑顔がない。鞍上の胸中にあったのは前日25日の中山5Rの失態。エフフォーリアの半弟で同じく鹿戸厩舎のヴァンガーズハートに騎乗したが、決勝線手前で数完歩追う動作を緩めて鼻差の2着。JRAから、注意義務を怠ったとして2日間の騎乗停止処分を受けた。「僕のふがいない騎乗のせいで、皆さんの信頼を失ってしまった。申し訳ない思いだった」。喜びは押し殺した。馬場から引き揚げてくるとファンに向かって二度、深々と頭を下げた。
そんな23歳の姿を頼もしげに見つめていたのが同馬を管理する鹿戸師。戦前のパドックでは「武史が一番うまいんだから馬を信じて乗ってこい」と背中を押した。この言葉に「救われた」と横山武。指揮官は「昨日は厩舎としても不慮の事故(阪神カップで競走中止のベストアクターが安楽死)もあって…。お互いに切り替えていくしかない、と。ファン投票1位、1番人気のプレッシャーに応えられたのは、騎手として一流の証だと思う」。若きグランプリジョッキーに最大級の賛辞を送った。
3歳で天皇賞・秋、有馬記念を制したのは父の父シンボリクリスエス以来19年ぶり史上2頭目の偉業。師は「将来的には海外に挑戦して引退という思いもある」と夢を膨らませるが、絶対王者としての地位を確立するべく、22年は国内が主戦場となる見込み。横山武は「馬はこれからもどんどん強くなっていく。僕はまだまだ未熟なのでエフフォーリアとのコンビが似合う騎手に成長していきたい」。エフフォーリア×横山武。歴代最多26万742票の期待に応えた人馬は文句なく日本一“似合う”最強コンビ。異を唱える人は、もういない。
◆エフフォーリア 父エピファネイア 母ケイティーズハート(母の父ハーツクライ)18年3月10日生まれ 牡3歳 美浦・鹿戸厩舎所属 馬主・キャロットファーム 生産者・北海道安平町のノーザンファーム 戦績7戦6勝(重賞4勝目)総獲得賞金7億3663万6000円。馬名の由来は強い幸福感(ευφοριαの現代ギリシャ語読み)で母名から連想。
◇横山 武史(よこやま・たけし)1998年(平10)12月22日生まれ、茨城県出身の23歳。幼少期から騎手を目指し、17年3月に美浦・鈴木伸厩舎所属でデビュー。同年4月16日の福島9RヒルノサルバドールでJRA初勝利。今年の皐月賞(エフフォーリア)でG1初勝利。JRA通算3267戦298勝。目標騎手は父・横山典弘。1メートル61、45キロ。血液型O。
【有馬記念アラカルト】
☆騎手 横山武のJRA・G1勝利は今年4勝目で通算4勝目。23歳0カ月5日での有馬記念勝利は歴代4位の年少優勝記録。父・典弘との父子制覇は武邦彦・豊に続き史上2組目。
☆調教師 鹿戸師のJRA・G1勝利は今年3勝目で通算4勝目。
☆種牡馬 エピファネイア産駒のJRA・G1勝利は今年4勝目で通算7勝目。
☆記録と話題 エフフォーリアのデビュー7戦目の有馬記念制覇は最少キャリアタイ記録(他に98年グラスワンダー、18年ブラストワンピース)。ファン投票1位の勝利は昨年クロノジェネシスに続き、2年連続で通算17勝目。ファン投票数26万742票は歴代最多得票数。
☆稼ぎ頭 エフフォーリアの今年の獲得賞金は7億1934万7000円で21年JRA年間最多賞金獲得馬となった。3歳馬のランキングでは11年オルフェーヴルに次ぐ歴代2位。
《前年比アップ》有馬記念の売り上げは490億9724万6400円で対前年比105・8%とアップした。
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